設備の老朽化、コロナ禍のダメージ、人口減少――逆境の地方鉄道が模索する「稼ぎ方」
小池会長は新潟県南魚沼市の豪雪地帯と上越市の日本海沿いをつなぐ「北越急行」の社長でもある。同社はかつて越後湯沢から北陸へとつながっていた在来線特急「はくたか」を擁し、約130億円の内部留保を誇る「三セクの優等生」だった。だが、2015年の北陸新幹線の開業に伴い、はくたかは廃止。一気に運輸収入の約9割を失った。2022年3月期決算時の営業損失は9億3706万円と、過去最悪に落ち込んだ。 一般社団法人金融財政事情研究会が発行する「業種別審査事典」の第三セクター鉄道業の市場規模項目には、こんな記載がある。 「定期的な利用者数が減少傾向にあるため、鉄道業単独での事業黒字確保がむずかしい先が多く、地域との連携による町興し的な行事による集客によって増収を目指していることが多い」
三セク協議会も、加盟各社協力のうえ、寺社の御朱印をモチーフにした「鉄印」を集めて記印する「鉄印帳」の販売を2020年から開始するなど、新たな収益を得るための試みを進めている。小池さんが続ける。 「鉄印帳はあくまで一例ですが、全国の加盟各社で協力できることは何でも行う。例えば部品の共有など、コストカットのための連携もそうです。鉄道事業単独ではなく、それぞれの地域性を生かし別事業で収益化を図る動きもあります」
人気を呼んだ「レストラン列車」も老朽化には勝てず
いすみ鉄道でも、キハ28を使ったイベント列車を2013年から運行していた。車窓からの景色を楽しみながら食事ができる「レストラン列車」だ。いまやレストラン列車は全国的に広まっているが、先駆けはいすみ鉄道だった。創設から9年間シェフを務めあげた、茂原市のイタリアンレストラン「PESCE AZZURRO」の池田征弘(50)代表が振り返る。 「最初は『本当にできるのかな』と思うほど、とにかく予想外の連続でした。電車はめちゃくちゃ揺れるから配膳も難しい。倒木もあるし、鹿やイノシシなどの動物が線路に飛び出してきて列車が止まったこともあった。オーブンを持ち込んで電車が動かなくなったこともありましたね(笑)。スムーズにできなくて苦労したんですが、そういうところもローカル線ぽくていいかな、と次第に考えが変わりました」