「将来アレルギーを起こす食べ物は子供に与えない」はもう古い、専門家が最新の知識を解説
複数の食物アレルギーを減らす初の薬「ゾレア」ほか、食物アレルギーの最前線
食物アレルギーは命にかかわる恐れのある重大な疾患だ。じんましん、嘔吐、呼吸困難、そして急激な血圧低下など、食べ物に関する病気のなかで最もひどいいくつかの症状を引き起こす。人によっては、症状が急激に進み、救急の処置が必要になることがある。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 米国疾病対策センター(CDC)によると、米国では子どもの約8%と大人の約6.2%が食物アレルギーをもっている。そこで、専門家たちはこれらを克服し、場合によっては予防する方法を研究中だ。 「現在、私たちが診断している食物アレルギーは確実に増えています」と、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・アレルギー機構部門の部門長であるパトリシア・フルカーソン氏は言う。「アレルギー全般は世界中で増え続けています」 長年の間、親は子どもにアレルギーを引き起こす食べ物(アレルゲン)を与えないようにアドバイスされてきた。だが、子どもを早めにアレルゲンにさらすと、将来アレルギーを発症するリスクが下がることが研究で明らかになっている。すでに食物アレルギーのある人も、新しい免疫療法で危険な反応を防げる希望も見えてきた。 以下に、食物アレルギー研究の新たな進展を紹介しよう。
食物アレルギーとは?
特定の食物にアレルギーをもつ人々の数を特定することは困難だ。理由の一つとして、アレルギー反応に似た症状を示す食物過敏症が数多く存在することが挙げられる。例えば、乳糖不耐症は、アレルギー反応に似た腹痛を引き起こすことがあるが、厳密には消化器系の問題であり、牛乳アレルギーではない。 食物に対して悪い反応が出たとき、それが本当にアレルギーかどうかを確認する最善の方法は、医師の診断を受けることだと、米ノースウェスタン大学医学部の食物アレルギー・ぜんそく研究センター(CFAAR)所長で小児科医のルーチ・S・グプタ氏は言う。アレルギーであることが分かれば、治療計画を立てることができると氏は説明する。 食物アレルギーは免疫反応であるという点で他の過敏症とは異なる。アレルギー反応では、ピーナッツタンパク質などの本来は無害な外来のタンパク質を、体が危険なものとして誤って認識する。そして、侵入者を撃退するために、体は「免疫グロブリンE」(IgE)と呼ばれる抗体を産生する。 特定の免疫細胞(好酸球、マスト細胞、好塩基球)にIgEが結合すると、活性化して「ヒスタミン」と呼ばれる化学伝達物質を放出する。これにより、腸・皮膚・肺・心臓の4つの主要な臓器系のいずれかにアレルギー反応が生じる可能性がある。症状としては、かゆみや発疹、肺の筋肉の収縮、嘔吐や下痢などだ。 4つの臓器系の2つ以上に急激な症状があると、「アナフィラキシー」と呼ばれる。例えば、嘔吐と呼吸困難のように、腸と肺の両方に症状がある場合だ。アナフィラキシーになったら、気道の筋肉を弛緩させて呼吸をしやすくするために、アドレナリンというホルモンが含まれている「エピペン」という注射薬を投与する。 「呼吸器系と心臓系のアレルギー反応は生命を脅かす可能性があり、最も恐ろしいです」と、米ノースカロライナ大学小児科アレルギー・免疫学部長で、同大学食物アレルギー研究イニシアティブを率いるエドウィン・キム氏は言う。 食物アレルギーそのものに軽重はない。引き起こされる反応が軽いか重いかの違いがあるだけだ。アレルギー反応には予測不可能なところがあり、過去に軽い反応を引き起こしたアレルゲンが、将来はより強い反応を引き起こすこともあり、またその逆もありえるのだ。