「将来アレルギーを起こす食べ物は子供に与えない」はもう古い、専門家が最新の知識を解説
なぜ食物アレルギーは増えているのか?
食物アレルギーの原因は2つある。遺伝と環境要因だ。グプタ氏は、遺伝だけでは昨今の急激なアレルギーの増加を説明できないと言う。しかし、両親ともに季節性アレルギーや湿疹などの免疫調節異常がある場合、子どもがアレルギーになりやすいことが分かっていると、キム氏は言う。 一方、食物アレルギーを引き起こす環境要因については、2つの主要な仮説が提唱されている。そのうちの1つが「衛生仮説」だ。この仮説は、社会が清潔さを追求しすぎることにより、細菌やウイルスに早期にさらされる機会が減ったせいで、ありふれた無害なタンパク質に免疫系が過剰に反応しやすくなるというものだ。 世界の多くの地域で、昔のように子どもたちが土や家畜の近くで過ごす時間は減っている。このことが、いくつかの調査結果が示すように、都市部では農村部に比べて食物アレルギーが多い理由である可能性がある。 「生後100日間や1年間で様々なものに触れることがいかに大切であるかということはよく言われます。それは土遊びや様々な食物に触れることにも当てはまります」とグプタ氏は言う。自分の子どもがアレルギーをもっているかもしれないという不安から、親は乳幼児に初めての食べ物を与えることに過度に慎重になっているのだと、氏は補足する。 しかし、衛生仮説はアレルギーが増加している理由を完全には説明できない。研究では、(アジアにおける魚介類など)ある特定の食べ物に皮膚がさらされる程度と、その食べ物のアレルギーの発生率の高さに関連があると指摘されている。これが「二重抗原曝露仮説」だ。この仮説は、皮膚から食べ物が体に入ってくると食物アレルギーになりやすく、口から食べた場合にはアレルギーになりにくいというものだ。 米ジョンズ・ホプキンス大学小児センターのユードウッド・アレルギー・免疫学部門を率いるロバート・A・ウッド氏は、親が赤ちゃんの皮膚にベビーローションを塗る場合を例に挙げる。二重抗原曝露仮説が正しければ、もし親の手にごくわずかでもピーナッツのタンパク質が付着していれば、子どもが後にピーナッツアレルギーを発症する可能性が高くなることになる。 これら2つの仮説は圧倒的に研究例が多い。他の仮説としては、食物の栽培や包装方法の変化のほか、気候変動の影響などが挙げられている。