「将来アレルギーを起こす食べ物は子供に与えない」はもう古い、専門家が最新の知識を解説
アレルギー予防の進歩
経口免疫療法は、早い時期から特定のアレルゲンに触れさせることを含めて、長期的には信じられないほどの効果をもたらす場合がある。 代表的な例のひとつが、1歳未満の子どもにピーナッツを含む商品を与えると、将来的にピーナッツアレルギーになるリスクが大幅に減ることを明らかにした「LEAP (Learning Early About Peanut Allergy ) 研究」だ。ピーナッツを与えられた子どもたちは、ピーナッツを避けていた子どもたちと比べると、5歳の時点でアレルギーになるリスクが81%低かった。 当初の参加者の500人以上を追跡して調べた結果によると、乳幼児から5歳までピーナッツを食べていると、12歳の時点でも食物アレルギーの発症リスクが下がっていた。論文は2024年5月28日付けで医学誌「NEJM Evidence」発表された。 「効果が長く続いたのを見て、とても満足しました」とフルカーソン氏は言う。 アレルギーの定着を防ぐことは研究者にとって聖杯を探すようなものだと、フルカーソン氏は言う。アレルギーが驚くべき速度で増え続ける中で、効果的な予防方法がなければ、無害だとわかっている栄養をもっと受け入れられるように、体を訓練する新しい治療法を試さなければならない。 例えば、これまで食物アレルギーではアレルゲンを避けるか、あるいは毎日少しずつ摂取して徐々に増やしていくかしか方法がなかった。 一方、今では偶発的なアレルギーから身を守るのに役立つ薬がある。一つの例が、複数の食品に対するアレルギー反応を減らす薬として、米食品医薬品局(FDA)が初めて承認したオマリズマブ(広く知られる名前はゾレア)だ(編注:日本では既存治療で効果不十分な気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹で承認されている)。この抗体薬は血液中の免疫グロブリンEに結合し、アレルギー反応を引き起こす免疫細胞の活性化を防ぐ。 臨床試験では、ゾレアを投与されたピーナッツアレルギーのある人々の68%がピーナッツを食べることができた。だが、17%は耐性に大きな変化はなかった。したがって、たとえ治療が行われても、専門家たちはまだアレルギーを避ける必要はあると警告している。 遺伝子編集技術であるCRISPRの進歩のおかげで、科学者たちはアレルゲンの遺伝子を編集して削除できるようになった。これは、いつの日かより具体的な突破口を開く可能性がある。 アレルギー治療の研究が進む一方、アレルギーと共に生活することはストレスフルに感じることがあるだろう。しかし、医療の専門家からのアドバイスを受けつつ、自分で管理できることを学べば、安全な美味しい食事が再び楽しめるかもしれない。 「それは本当に家族にとって快適で、合理的な対応です。だからこそ、小児科医に協力してもらうことが最善のアプローチです」とフルカーソン氏は言う。
文=ALLIE YANG/訳=杉元拓斗