「陽キャ」の陰で悩んだ――ナオト・インティライミ「僕だって弱音は吐きます」【#コロナとどう暮らす】
無人島で自分しかいなかったら、歌っていないかも
ライブもやらず、テレビにも出ず、CDリリースもせず、旅をしてインプットを続けたいま、メジャーデビュー10周年の節目を迎えることができた。ところが、今度はエンタメ業界が、新型コロナウイルスの感染拡大に大きな影響を受けることになってしまった。 昨年9月、海外の大手レーベル「ユニバーサル・ラテン」とアジア人で初となる契約を交わし「El Japones」(エル・ハポネス)というスペイン語楽曲で海外デビューを果たした。次なる目標は海外ライブとし、その活動のためにこの1月からアメリカ、メキシコに行っていたのだが、滞在の最中で新型コロナウイルスが世界中に広がっていくのを目の当たりにした。
現地ではアジア人であるという見た目から、「コロナウイルス」と指をさされ笑われたこともあったという。 日本で広がっていく感染を知って、3月中旬に予定を早めて帰国した。この春以降、デビュー10周年のために全国ツアーやベスト盤の発売を予定していたが、その大半を来年に延期する決断を下した。「白紙」になったライブは50本を超える。 「頭を抱え、叫びたくなるときもありました。やっぱりね……ライブできないのがきつい。高校生の終わりにストリートライブを始めてから27年間、ずっとライブをしてきた。お客さんが2、3人しかいないころから、少しずつ少しずつ増えてきて、ありがたいことに、今ではドームライブまでやらせてもらえるようになった。ライブで成長させてもらってきたようなものですから、試合や大会を奪われたスポーツ選手のようですね……今は」
けれども、光も差してきた。 緊急事態宣言下の5月2日、ショートムービープラットフォームの「TikTok」で行った自宅からのチャリティー・オンラインライブは、初めての試みだったが、7万人が視聴した。 目の前に観客はいないものの、コメントはリアルタイムでどんどん集まってくる。離れた場所にいるはずのお客さんが、自分のところにギューッと集まってくるのを感じた。感極まって、歌いながら泣いてしまった。いま改めて、ライブの大切さをかみしめているという。 ナオトはライブへのこだわりをこう話すのだった。 「初めての武道館ライブでこんなことを言っているんです。思わず出た言葉でした。……皆さんがつらいのは知ってる。でも、つらくなったり悲しいことがあっても、いつでもみんなのパワースポットを用意して待ってる。ステージ上に用意して待ってるからいつでも遊びに来い」 どんなに明るく見えている人でも、笑顔でライブを観ている人でも、悔しいことや悲しいこと、寂しさなんかをみんな抱えている、と思うんですよね。そうした気持ちに寄り添ってあげたいな、といつも思っている。