「陽キャ」の陰で悩んだ――ナオト・インティライミ「僕だって弱音は吐きます」【#コロナとどう暮らす】
あえてストレートに聞いてみた。「陽キャ」というイメージは、自分を苦しめることはなかったのか。 「元気印きつくない? って言われるのですが、いつもこうではありません。自分だって弱音は吐きます。それと、心の信号をキャッチすることもあるんです。自分、過去に心のSOSがキャッチできなくて、ひきこもりになった経験があります。今なら、このまま続けたら壊れちゃうなってキャッチできるようになった」
3度のメジャーデビュー、ひきこもりの経験
若いころ、いまのように余裕があるわけではなかった。実は3度もメジャーデビューに挑んでいる。過去2度のメジャーデビューは失敗に終わっている。 最初のデビューは大学4年生のときだった。インティライミという名前ともまだ出会っておらず、このときはとにかく売れなかった。 「音楽的に表現方法を知らなかった。引き算を知らなかったというか、肩に力が入っていて詰めこみすぎていて、思いが伝わらない。周囲の人への感謝も足りなかった」 周囲に「ビッグになってやる」と啖呵をきったものの、結果がついてこない。発売されたCDが店頭に並ばないこともあった。 「理想と現実のギャップがきつく、落ち込んでいる姿を見られたくなかったし、電話にも出たくなかった。8カ月間、ひとり暮らしの部屋にこもりました。才能もないし、やめようと考えていましたね」 ひきこもりをやめるきっかけは、自らの夢に掲げたワールドツアーへの思いだった。ワールドツアーの下見と称してナオトは2003年夏から1年半かけ、世界一周の旅に出ている。帰国後、2005年に2度目のメジャーデビューを果たす。このときのデビューも売れなかったけれど、1度目の失敗と、旅の経験でメンタルは強くなっていた。だから耐えて次へのチャレンジができたという。
ナオト・インティライミは自らを「旅人」とも表現する。旅は自分をリセットするときの大切な手段だという。 「大げさに聞こえるかもしれませんが、旅は自分にとって『革命』なのかなって。自分のなかで心の革命を起こすことで、また前に進んでいける。長い期間、海外を旅するのはタフさを求められるし、様々な出会いがあります。生命の危険に晒されることだってあります。そういう経験をすると、自分のなかでふきだまっていたものが整理できるんです。うまくいかなかった経験があっても、ポジティブに変換できるようになるんですね」 3度目のデビューを果たしてからは順調だったが、2017年から1年半、一切のスケジュールを白紙にし、再び旅に出て世界20カ国を回った。 順調な音楽活動。今度は押し寄せてくる仕事の量に心のSOSを感じたからだ。このままだったらダメになる……という思いがあった。過密スケジュールに追いこまれ、ライブがつらいと感じる時期すらあったという。 「お仕事がどんどんやってくる。ありがたい話でした。でも……働き過ぎでしたね。夢を追っているはずが、ある時期から『追われている』という感覚が強くなってきた。アウトプットの連続でしたし、世間から自分が飽きられていることも実感し始めていました」