「こうのとり」は“宇宙の宅配便” 9日夜に6号機打ち上げ
国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ無人輸送機「こうのとり」6号機の打ち上げが迫ってきました。H-IIBロケット6号機に搭載され、12月9日の午後10時26分に種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられ、13日20時頃にISSとドッキングする予定です。 【中継録画】「こうのとり」6号機 打ち上げの模様をライブ配信 「こうのとり」はどんな役割を担うのでしょうか。また、管制官ら地上スタッフはどんな思いで運用を担っているのでしょうか。
ISSに何を運ぶの?
「こうのとり」が届ける物資は様々です。まず、ISSの運用維持に不可欠な物資、今回の「こうのとり」では二酸化炭素除去装置の交換部品やISSの電力をまかなう日本製のリチウムイオンバッテリーを運びます。 さらにISS内の日本の実験棟きぼうで使われる実験装置やきぼうから放出される超小型衛星7機を運びます。そして滞在する宇宙飛行士たちの飲料水や食料などです。食料もフリーズドライやレトルトの宇宙食だけではありません。今や果物などの生鮮食品でさえも宇宙に運ぶ時代になっています。
運用担う多様なプロ集団
打ち上げたロケットから切り離された「こうのとり」はISSに近づくと、ともに秒速約7.7キロ(東京~大阪を1分弱!)の速さでISSと並んで飛びながら、10メートルの間隔まで接近します。ドッキングは、ISSのロボットアームが「こうのとり」を捕まえる、という“神業”で行われます。この一連の運航を可能にするのが、地上から「こうのとり」を安全に制御および監視する運用管制チーム。運用計画立案を行う人、軌道制御、電力系統、通信、推進系などをそれぞれ担当する人、ISSを運用するNASAとの連絡・調整を担う人などなど、多様なプロフェッショナルの集まりです。
その「こうのとり」管制官たちを「指揮者」のようにまとめるのが、リードフライトディレクタである前田真紀さん。チームをまとめることはもちろん、すばやく的確な判断を下すことが求められます。ミッションでは万全を期するとはいえ、相手は宇宙空間を高速で飛ぶ「こうのとり」。さまざまな事態が発生しますが、何が起きても、着実に対処しなくてはなりません。 前田さんによれば、ミッション成功の秘訣は「日々の訓練」。 訓練では実際の打ち上げを想定してミッションを進めていきます。訓練用に随所に仕掛けられた異常を、いかにすばやく発見し、対処するか──。「異常」と一口に言っても、エンジンの噴射状態からライトの点灯状況まで、実に万単位の監視項目があります。これだけたくさんあると、事前にどこで何が起こるかの予想は難しいため、常に「もしもこの装置に異常が起きたら、どう対応しようか?」と考え、チームでその対策を議論するそうです。その積み重ねがあるからこそ、何が起こっても冷静沈着に対応できるのです。