「こうのとり」は“宇宙の宅配便” 9日夜に6号機打ち上げ
「時間通りに届く」を目指す
前田さんの言葉によれば、「こうのとり」はISSに物資を届ける“宇宙の宅配便”。 地上での私たちの暮らしでは、今や宅配便は「届けば良い」ではなく、「時間指定で届く」が当たり前になっています。この当たり前は、届けてくれる人の努力によって実現されています。前田さんもそんな届けてくれる人たちと同じ気持ちだ、と言います。 宇宙の宅配便「こうのとり」も、もはや届くことは当たり前でなくてはならない。航行中は何かあっても確実に対処して、予定通りに物資を届けられるように。そして、無事に届いたときには、前田さんの胸には「宇宙で暮らす人のためになってよかった」、そんな喜びがわいてくるそうです。 宇宙の宅配便は時間指定配達を目指すだけではありません。 今や宇宙飛行士たちはISSで生鮮食品を楽しめるようになっています。それを可能にしたのが「レイトアクセス」。いわば速達サービスですが、この場合のレイト(遅れて)とは、後から遅れて積み込むという意味です。通常の物資はまず「こうのとり」に積まれ、次に「こうのとり」が打ち上げ用のロケットに搭載されます。ここに時間がかかるので、傷みやすい生鮮食品は届けるのが難しかったのです。ですが、レイトアクセスでは「こうのとり」がロケットに搭載された状態で、後から物資を積み込むことができます。積み込んでから打ち上げまでの時間を短くできるので、果物なども運べるようになったわけです。 前田さんたち運用管制チームは積み込みには直接かかわりませんが、物資の重心位置を指定し、積み込み後のデータを運航に反映させるなど、レイトアクセスを支える技術を担っています。前田さんは何が積まれているか搭載物の内容も把握しており、ISSに送られる物資に、衣類やシャンプーといった日用品がだんだんと増えていることを感じているそうです。 初期の宇宙飛行士にとって、宇宙船の中は持ち込める物も限られていて、不便さもある場所でした。それが、今では日用品も運び込まれています。物資補給機「こうのとり」が、宇宙飛行士の宇宙での日々を日常に近いものにしています。「こうのとり」が、宇宙で暮らす私たちをイメージさせてくれる、といっても過言ではないでしょう。