10分の「手術」と8時間待つ「飲み薬」 医会が経口中絶薬の導入に消極的な事情 #性のギモン
議連で幹事長、また現在、衆議院厚生労働委員会で委員長を務める三ツ林裕巳氏は議連の主なテーマは2024年4月からの医師の働き方改革や「地域の産科医療施設の存続」のほうだと語った。 経口中絶薬について、三ツ林氏は「安易に広まってほしくない」という慎重な立場だが、承認について圧力をかけたことはないという。ただし、運用に関しては一部の議員の意向が反映されていると認めた。 「薬事小委員会では『縛りをかけて慎重にやりましょう』という方向に動いた。最初は全員入院を条件とすべきだという意見も結構あった。それが『いざという時は入院できる』という方針に落ち着いた。そこで有床施設でスタートすることになったんです」
三ツ林氏は元内科医。だからこそ厚生労働委員会にも属している。それでも「産婦人科医療に詳しかったわけではない」という。では、経口中絶薬の運用に関して具体的な助言をした人がいたことになる。誰だったのか。尋ねると、三ツ林氏の答えは明快だった。 「医会です。議員はしょせん専門家じゃない。医会の先生方の意向を十分に踏まえないと運用できないですよね」 話は政治の場を経て、また医会に戻った。
厚労省への要望書には「医療機関の収益性」への懸念も
薬の承認後の運用については医会の意向が強く働いていたというが、医会の内部ではいつから議論されていたのか。 医会の事業報告書をあらためて検証していくと、ある“要望書”を見つけた。 日付は2013年9月25日。「経口妊娠中絶薬『RU486(ミフェプリストン)』に関する要望書」という文書。厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長宛てと明記されている。 「母体保護法指定医が用いることが、大前提」「適応、方法、管理法と管理料など、薬剤の医学的効用から、使用上の留意点など、慎重に検討しなければならない」「使用方法や数回の受診の必要性」と今の運用要件につながる内容が記されていた。「医療機関の収益性」への懸念も訴えている。