10分の「手術」と8時間待つ「飲み薬」 医会が経口中絶薬の導入に消極的な事情 #性のギモン
2021年の医会と政治家の動き
医会役員の活動内容が記録されている「事業報告書」。2021年5月に目立った動きがあった。 〈5月15日(土)三原じゅん子厚生労働副大臣と経口中絶避妊薬について意見交換〉 この5日後、政界では、ある“議連”が発足していた。「地域で安心して分娩できる医療施設の存続を目指す議員連盟」。国会で経口中絶薬にまつわる質疑が集中的に行われていた時期だった。 資金的な支援はどうか。政治活動が盛んになると、政治献金が伴うことが少なくない。 医会がもつ政治団体「日本産婦人科医師連盟」の2021年の収支報告書を確認した。すると、上記議連に参加した議員を中心に、パーティー会費、および寄付金が支払われていた。時期は同年5月から12月までに集中し、議員側へ支払われた総額は300万円を超えていた。
議連の事務局長、田畑裕明衆院議員(自民党)へは、パーティー会費が10万円、選挙区支部への寄付が計35万円。議連の幹事長、三ツ林裕巳衆院議員(自民党)の資金管理団体への寄付が10万円。ほかにもパーティー会費が複数の議員に支払われていた。多くが「安倍派」と言われる清和政策研究会の面々だ。さかのぼって3年分の収支報告書にも目を通したが、田畑、三ツ林両議員への献金は他の年には見られなかった。 報告書を精読すると、献金の実施とほぼ同時期に、医会幹部と厚労省との間で、中絶薬についての協議が重ねられていた。
とはいえ、薬の承認は厚労省の承認審査を担当する部門が受け持ち、外部機関で薬の有効性・安全性に基づき承認の有無を判断する。1990年代に審査管理に関わった元厚労省の森和彦氏は、「かつて国会で随分議論されましたし、今は政治の横やりは承認の過程には入ってこないはず」と語る。 ならば、政治家がどこで影響力を及ぼすのか。
薬の承認後の運用は議員の意向が反映された
二人の自民党議員に尋ねた。 田畑裕明議員は、今年4月12日の自民党の厚労部会・薬事小委員会で委員長を務めた。厚労省の薬事・食品衛生審議会で経口中絶薬の承認が検討される直前のことだ。 この薬事小委員会を経て、「厚労省側が経口中絶薬の運用に関する説明を硬化させた」と医薬専門紙が報道していた。「有床施設で外来や入院」という当初の説明が、薬事小委員会終了後には「入院可能な有床施設で入院または外来」と「入院」を強調する表現に変わったという。 この時のことを尋ねると、田畑氏は薬の承認後の管理体制は話題になったと語った。 「この薬は母体保護法上の指定医師が、薬の使用の管理をすることになっていますよね。使用後の報告も含めて、きちっと厳格にしなければいけないという指摘は(自民党内で)ありました」 一方、議連への参加や献金については、中絶薬政策との関連は否定した。