「不当廉売」の結果は?アメリカ・ボストンで〝訳あり商品〟の地下鉄に乗車 脱線やバッテリー爆発も、中国メーカー製の乗り心地は…「鉄道なにコレ!?」【第63回】
中国の国有企業で世界最大の鉄道車両メーカーの中国中車が、アメリカ向けで初めてとなる東部マサチューセッツ州ボストン都市圏の地下鉄車両の納入を始めてから約5年が経過した。運行開始当初から脱線したり、バッテリーが爆発したりといったトラブルが相次ぎ、たびたび運行中止に追い込まれる「問題児」(運行当局職員)となっている。入札時には川崎重工業グループなどの競合企業を2~5割下回る金額で受注して「ダンピング(不当廉売)だ」との衝撃が走ったが、今や安かったのは〝訳あり商品〟だったからとの受け止めすら出ている。一方、入札で中国中車に敗れた川崎重工は同じく東部にある大都市ニューヨークの地下鉄の新型車両を納入しており、両方に乗った印象は「全く別物」だった。(共同通信=大塚圭一郎) 【写真】ニューヨークの地下鉄、一部の若者による「超非常識行動」への対策で…
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 【中国中車】中国国有の鉄道車両メーカーで、2023年12月期決算の売上高が2342億元(約5兆円)と業界の世界最大手になっている。本社を首都の北京に置く。中国北車と中国南車が15年に合併して誕生しており、合併の背景には、世界で2番目の経済大国である中国の習近平国家主席が2013年に提唱した中国と欧州やアジアを結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」の推進に向けた競争力強化があったとされる。 一帯一路はインフラ整備などを通じて域内の経済を発展させるとともに、「親中国圏」を広げて世界最大の経済大国のアメリカなどに対抗する狙いがあると指摘されている。推進に向けた一環として、インフラ整備のための融資を提供するアジア向け国際開発金融機関のアジアインフラ投資銀行(AIIB)も中国が主導して2015年に設立された。 一帯一路の目玉となったのが、日本勢を破って中国が受注したインドネシアの高速鉄道建設だ。中国中車が車両を製造し、計画より4年遅れの2023年10月に開業した。