なぜ歴史的ビッグマッチが実現したのか…12.29埼玉で村田諒太vsゴロフキンのミドル級統一戦…ファイトマネー日本史上最高額
いくつもの壁があった。 本田会長は、「コロナの問題が一番大変だった」と振り返った。ゴロフキンも2020年に指名試合としてカミル・シュルメタ(ポーランド)をTKOに葬ってから1年のブランク。村田は、この間、防衛戦が5度決まりながら、新型コロナの影響で流れ、5回TKOで勝った2019年12月のスティーブン・バトラー(カナダ)戦以来、2年試合ができていない。政府が決定した海外からの渡航者の隔離ルールや、スポーツ庁が指導する厳しい感染予防のガイドライン、行政が定めた興行制限など、いくつものクリアすべき問題があり、今回のゴロフキン戦も基本合意に達し海外メディアが先に発信しながらも、新型コロナの影響でゴロフキン陣営の重要人物のビザの発給許可がなかなか下りず正式発表ができなかった。実際に細かなコロナ対策を余儀なくされ、ゴロフキン陣営の日本滞在ホテルのレストランつきフロアを借し切り、東京五輪時のような“バブル”を構築せねばならないなど、それだけで3000、4000万円の経費が必要になるという。通常ならそれだけで両者のファイトマネーも含め世界戦ができるレベルのとんでもない額だ。 もうひとつの壁はゴロフキンの最低でも10億円以上かかるファイトマネーをどう捻出するかという問題があった。日本の地上波が出せる放映料には限界があり、とうてい届かない。海外ではPPVという有料放送のシステムが構築されており、そこから巨額な金額が生み出されるわけだが、日本でもそのインフラは整備されつつあるが浸透はしていない。そこで今回は異例のビジネススキームが組まれた。 米市場を含めた海外200か国への配信はDAZNが独占して、その放映料はゴロフキンサイドが総取りし、日本国内は、国内でのスポーツライブ中継への初進出となるAmazonと組み「Amazon Prime Video」が独占生配信し、こちらの放映料は、村田サイドが手にするという過去に例のないスキームだ。 この日の記者会見は、海外向けと、日本向けの2部構成で行われ、海外向けの会見の映像使用などに制限が設けられたが、これはDAZNが海外への中継権を独占しているから。また国内の興行については、チケッティング、スポンサーフィーも含めてGGGプロモーションと合同で行うという形となり、その一部もゴロフキンサイドが手にするという。 会見に出席したAmazonのジャパンカントリーマネージャーの児玉隆志氏は、この試合を皮切りに今後も、ボクシング中継を行っていく考えを明かした。Amazonにしても新しい顧客開拓につなげる絶好のプロモーション機会と捉えての投資。相当のビッグマッチでなければ、中継は行わないようだが、帝拳が国内で地上波以上の放映料を生み出す仕組みの先駆けを作った意義は、日本のボクシング界の発展にとって大きいだろう。当然、何もかもが過去のボクシング興行の常識を覆すことになる。 新型コロナの影響で、入場人数が制限されるため、リングサイドの価格は15万円くらいになりそうで、1990年に世紀の番狂わせを起こした東京ドームでのマイク・タイソン対ジェームズ“バスター”ダグラス戦をプロモートした本田会長は「(コロナ対策の)経費を含めるとタイソン戦以上。時代は違うが、(過去最高額の興行になることは)間違いない。村田のファイトマネーも過去最高額?もちろん」と断言した。 村田のファイトマネーも史上最高額となる。