漁獲量が激減・謎の多い魚「マアナゴ」養殖に取り組む動きも
すしや天ぷら、丼ものの食材として人気のマアナゴの漁獲量が近年、大阪湾などで激減しています。全国的にもほぼ減少傾向にありますが、マアナゴの研究は減少理由を特定できるところまで進んでいないのが現状です。一方、漁業関係者の中には、マアナゴの養殖に取り組む動きも出ています。 【拡大写真】大阪湾・播磨灘では「イカナゴ」も近年は漁獲量が急減している
昔は夏場でも獲れていたが今は獲れず
「マアナゴ漁の最盛期は1月から4月にかけて。昔は夏場でも獲れていたんですが今は獲れないので誰も漁に出ません」と語るのは、大阪府南部の泉南市にある岡田浦漁業協同組合の東裕史さんです。 マアナゴは、ウナギ目アナゴ科の魚です。産卵場所とされているのは、日本の最南端である沖ノ鳥島の南方にある九州・パラオ海嶺のある海域。卵からふ化するとそこから黒潮で北に流されて、日本沿岸や朝鮮半島沿岸、東シナ海に面した東アジアの沿岸にたどりつき、成魚に成長します。 ちなみに、ニホンウナギも南方のマリアナ諸島付近の海域でふ化した後、黒潮で東アジア沿岸に流されてきますので、マアナゴとは体型だけでなくライフサイクルも似ています。
大阪湾の漁獲量は1996年の約40分の1に
農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、大阪府のあなご類(マアナゴ、クロアナゴ)の漁獲量は、国が統計を始めた1995年で646トン、翌1996年は743トンありました。 ところが、その後は年々減り続けて2019年には18トンと1996年の約40分の1に激減。泉南市でも、2004年の140トンから2018年には3トンにまで落ち込んでしまいました。 マアナゴが獲れなくなっているのは大阪湾だけではありません。日本全体でも2019年の漁獲量は1995年の約4分の1(3329トン)にまで減少しています。
全国的にも漁獲量が減少傾向
なぜ、漁獲量が減ってしまったのか。原因は明らかではなりませんが、水産研究・教育機構水産資源研究所の横内一樹さんによると (1)南方の産卵場所から来遊する稚魚の量が減少している (2)日本沿岸にたどりついた後にうまく育たない (3)海流の変化などで稚魚がたどりつく場所が変わった。 などの理由が可能性として考えられるそうです。 もっとも、横内さんによると「全国一律に減っているわけではありません。たとえば、伊勢・三河湾や瀬戸内海などの内湾では減少していますが、東北地方沿岸、九州の東シナ海側沿岸では横ばいです。国外では、韓国沿岸でもゆるやかに減少しています」とのことです。