名前は消えるがレガシー継承…なぜ2021年限りF1撤退のホンダはレッドブルのパワーユニット技術継続使用を認めたのか?
ホンダは先月、F1パワーユニット技術をレッドブルへ引き継ぎ、現在ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルとアルファタウリの2チームが、2022年以降もホンダのパワーユニットを継続して使用することで合意に至ったことを明らかにした。 ホンダは昨年の10月に、2021年限りでF1参戦を終了すると発表している。つまり、ホンダは会社としてはF1活動を終了するが、ホンダのエンジンやハイブリットシステムは2022年以降も走り続けることとなった。 なぜ、ホンダはこのような決定を下したのだろうか。まず、ホンダがF1参戦を終了することになった理由を整理したい。ホンダの八郷隆弘社長は過日の会見でその主な理由を「2050年までにカーボンニュートラルを実現するため」だと語った。そのためには、F1参戦に使用してきたリソースが必要だったのだ。 自動車業界は100年に一度の変革期と言われ、ホンダに限らず、自動車産業全体がカーボンニュートラルを目指して電気自動車の開発を競っている。2月19日にはホンダは4月1日付で八郷隆弘社長が退任し、後任に三部敏宏専務兼本田技術研究所社長が昇格する人事を発表した。三部次期社長は電動化や自動運転分野で中心的な役割を担い、八郷社長とともに研究開発体制の改革を推し進めてきた人物で、「2050年カーボンニュートラル実現」の本気度がうかがえる。 だからといって、ホンダはF1界に後足で砂をかけるようなマネだけはしたくなかった。F1はホンダにとって、DNAともいえる存在だったからだ。 現在のF1はホンダを含めて4社がパワーユニットを供給している。そのホンダが抜ければ、残る3社の負担は大きい。場合によってはレッドブルとアルファタウリは、F1撤退に追い込まれる可能性もあった。 ホンダには前回F1から撤退した2008年末に、苦い思い出がある。そのときはエンジンを供給するだけでなく、BARというイギリスのチームを買収して、チーム運営も行っていたが、リーマン・ショックに端を発した世界的な経済危機の前に、突然の撤退を余儀なくされた。イギリスに残されたチームは存亡の危機に陥ったのだった。 今回、ホンダがF1参戦の終了を1年以上も前に発表したのも、こうした反省を生かし、残されたチームに「次」の選択肢を模索する時間を与えるためだった。ホンダの渡辺康治ブランド・コミュニケーション本部長も「われわれは長い歴史を持つF1参戦の中で多くのことを学んできており、F1に対して大きな感謝の想いを抱いています」と語り、チームからの要望があれば、可能な限り支援することを約束していた。