【詳細データテスト】メルセデスAMG Sクラス 強力なPHEV ハンドリング良好 快適性は犠牲に
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
フェラーリ296GTB並みのパワーがあるPHEVだということはトピックになるだろうが、おそらくこのクルマでもっとも印象に残るのはハンドリングだ。びっくりするほどリニアなステアリングや、生まれついてのシャシーバランス、脇へ振れたり動揺したりしにくいサスペンションは、大きくなりすぎたC63のように感じることもしばしば。前後のアクスルがまるでひとつになったかのように動き、全長の長さを感じさせない。 メルセデスはAMG GT4ドアで、数々の複雑なシャシー制御システムをどう組織立てるか見極めたことを証明したが、同じことが今回も明らかに見て取れる。ベントレー・フライングスパーを別にすれば、まずまずの路面の直線をきっちり落ち着いて走れる高級サルーンは見つからない。このS63もそれが可能だとは言えないのだが、かなり速く走らせるのがきわめて簡単なのもまた事実だ。走らせたい位置を正確に通せる自信が持てる。 その代わりに、諦めなくてはならないものもある。最たるものは全開走行時の物理特性で、アジャスト性は犠牲になっている。AMGダイナミクスを名前と実態がそぐわないプロモードにしていても、前輪をすぐに駆動して、ESPも早めに介入するのだ。 これほど大きなクルマが、ほとど間違った動きをしないのだから、それを嘆くのはおかしなことかもしれない。しかしそれでも、われわれが残念に思うのは、できるはずのことをやっていないからだ。 とはいえ、満足できる点もたくさんある。ブレーキのペダルフィールは、回生ブレーキがかなり介在するにもかかわらず悪くない。
快適性/静粛性 ★★★★★★☆☆☆☆
広い意味で言えば、S63はこの上なく洗練されている。もっともリラックスした状態では、苦のないふわふわした乗り心地で、キャビンのマテリアルも心地よく、上質感を際立たせている。運転席からの視認性も非常にいい。 そうはいっても、AMG化は明らかに、Sクラスの眠気を誘うような性質を損ねている。大きなホイールとパフォーマンス志向のタイヤやサスペンションブッシュはノイズを大きくしている。とくに、荒れた路面ではそれが出てしまう。 113km/hで68dBAというのは、ベントレー・フライングスパーの64dBAには見劣りするし、2022年にテストしたS580eはさらに静かな62dBAだ。セカンダリーライドも標準以下で、この手の高級サルーンでは普通は気にならないような路面の穴やマンホールなどを吸収できない。 これは長年にわたりAMG版Sクラスの悩みどころで、速さと静けさのマリアージュは歴代ベストだが、完全に納得できるまでには至らない。