【詳細データテスト】メルセデスAMG Sクラス 強力なPHEV ハンドリング良好 快適性は犠牲に
内装 ★★★★★★★★☆☆
このS63のキャビンは比較的控えめで、このクルマの正体を示すものはアルカンターラ巻きのステアリングホイールくらいだ。いい感じのインテリアだと思うが、パーフォレート加工されたレザーキルトは、テスト車のブラックよりもう少しリッチな色合いのほうがいい。シエナブラウンとカーマインレッドが、無償オプションで用意されている。 リアシートについては、0-100km/hが3.6秒というクルマでありながら、サルーンとしての本分も忘れていない。S63にはショーファーパックが標準装備で、助手席を通常以上に前へスライドでき、羽のように柔らかいヘッドレストやヒーター付きアームレスト、さらに豪華なシートベルトによって、ずっと乗っていても最高な場所になっている。 サイドとリアの電動サンシェードは、気分次第で包まれ感を得ることができ、逆にパノラミックルーフは開放感をもたらしてくれる。 荷室容量はエンジン車の540Lに見劣りする305Lで、これはバッテリーパックに侵食されたせいだ。競合するアウディS8やBMW M760eは500Lを超える。
走り ★★★★★★★☆☆☆
過去のAMGモデルと比較するなら、0-161km/hが7.1秒というのは、2009年に24万9500ポンド(当時のレートで約3643万円)だったスーパースポーツ級モデルのSL65 AMGブラックシリーズより1.5秒も速い。また、キックダウンでの48-113km/hは、われわれが満点評価したF90型BMW M5 CSにコンマ3秒遅れるのみだ。 このS63がとてつもなく速いサルーンなのは驚かないが、ポテンシャルをフルに発揮しなくてもそれが感じられる。コンフォートモードで穏やかに加速していても、余力の底深さは明らかだ。パワートレインの電動要素はその大きな要因で、大型サルーンらしからぬ俊敏さをもたらすが、過剰にはならない。キックダウンが必要な場合には、ギアボックスは十分に素早く変速し、直後にロケットのように激しく加速するが、速度感は不気味なくらい感じさせない。 パワートレインにかかる負荷が常識的な範疇にあれば、普通はなめらかに変速する。もっともアグレッシブなスポーツ+に向けてモードを引き上げていくと、シフトを早めるために点火を切りつつ、電気モーターのトルクをフルに使って前へ進む勢いを保つ制御さえ使うようになる。効果的なテクニックだが、モーターに頼りすぎると、EVのように画一的なトルクデリバリーになってしまう。たとえ抑えめのV8サウンドが、エンジンの存在を忘れさせないとしてもだ。 ただし、そのデリバリーはみごとだが、魅力的というよりは印象的といいたくなる類のもの。完全な駆動系ともいえない。とくに低速では、ギクシャクすることもあるが、それはハイパフォーマンス仕様であろうとなかろうと、世界レベルの高級サルーンにふさわしいとは思えない。このハイブリッドシステムは、ノイジーなこともある。メカニズムが普通に動いて衝撃音を起こしているのかもしれないが、不調なのではないかと疑いたくなってしまうような音に聞こえるのだ。 もうひとつ不満なのが、V8に上乗せされたモーターのトルクが、必ずしもきめ細かく制御されていないこと。エンジンのトルクカーブとは無関係に、電力でブーストがかかるのだ。たしかに速いのだが、ちょっと落ち着かない走りになってしまう。