なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
名車今は亡きブランド
時代とともに市場は変化し、覇権を握っていた巨大企業でさえ、あっという間に倒れてしまうこともある。深い轍(わだち)にはまり、抜け出せないまま朽ち果てることは自動車業界では珍しくない。 【写真】イタリア風味の「ミニ」がお洒落すぎる【イノチェンティ・ミニを写真で見る】 (15枚) 今はもう存在しない企業の中には、すぐに忘れ去られたものや、素晴らしい技術やデザインを残してくれたものもある。今回は、消滅してしまった自動車メーカーやブランドを振り返り、その代表的なモデルとともに「最期」を紹介していきたい。
AMC:イーグル(1980年)
AMCイーグルは、本格的な四輪駆動システムと十分な最低地上高を頼りに、タフなトレイルや膝まで埋まる雪に挑んだファミリーカーだった。多くの点で、イーグルは現代のクロスオーバーの前身と言える。 今トレンドとなっているクーペSUVもまた、イーグルSX/4(次の写真)が先行していた。
では、AMCはどうなったのか?
同社は1979年にフランスのルノーに買収されたが、1980年代に燃料が比較的安くなったため、小型車中心のAMCは苦戦を強いられた。AMCを支持したルノーCEOのジョルジュ・ベッセ氏が1986年にテロリストに殺害されると、後継の経営陣はAMCへの関心を失い、1987年にクライスラーに売却した。
アンフィカー:モデル770(1961年)
1961年に発表されたアンフィカー・モデル770は、ボートと自動車のハイブリッドであり、直接のライバルはいなかった。リアに搭載されたトライアンフ製4気筒エンジンで、後輪またはリアバンパー下に見える2軸のプラスチック製スクリュープロペラを駆動し、前輪で陸上・水上を問わず操舵を行う。驚くほど多用途で、ありがたいことに完全防水だった。 大半は米国で販売され、そのうちの1台は、当時のリンドン・ジョンソン大統領(写真)が愛用した。彼は何も知らない訪問者を乗せ、テキサス州の牧場でブレーキが故障したふりをして湖に突っ込むという、子供のようないたずらを楽しんでいた。
では、アンフィカーはどうなったのか?
モデル770のような水陸両用の乗用車の市場は、アンフィカーを財政的に維持するには小さすぎた。BMWの大株主として知られるクヴァント家所有の会社によって西ドイツで約4000台が生産された後、1967年に終了。 アンフィカーはモデル770を廃止した後、自動車業界を後にした。今日に至るまで、水陸両用乗用車を大量生産した会社は他にない。