その「生産的な習慣」、実は有害かも?
3. マルチタスクを行なう
3つ目の「有害な生産性の習慣」は、1度に2つ以上のことをする「マルチタスク」です。 マルチタスクは一見生産性が高いように見えますが、実はこれによって圧倒されてしまう場合があるのです。 Nasir氏は「情報の処理に脳が費やすエネルギーの量で見ると、マルチタスクの認知的負荷は非常に高いのです」と説明します。 マルチタスクを本当の意味でこなす方法はありません。いくつものことを同時にこなしていると私たちは思っていますが、細胞レベルでは、取り組むタスクを脳が超高速で切り替えているだけです。それが脳に与える負担はとても大きいのです
有害な生産性のリスク
私たちの多くは、生産性の有害な副作用を進んで受け入れています。それが当たり前だと思っているからです。 けれども、こうした悪癖の副次的影響は、私たちの心と体の健康や人間関係に悪影響を及ぼすリスクをはらんでいます。 「生産性は、内的な動機や内的な価値評価とバランスをとらなければ、やがては疲労感や虚無感、燃え尽き感につながる」とNasir氏は警告します。 こうした有害な生産性を高めようとする習慣がもたらす悪影響は、多くの場合、長い時間をかけて悪化し、その人の心に深く根づきます。 「これを変えるには、小さな習慣からはじめるのがいい」とNasir氏は勧めています。 いちばん簡単なものから、いちばん低いハードルから入っていくのがいいでしょう。
健康的な新しい習慣をつくる
試してみるべきことの1つは、自分の行動を毎週確認して、1つのことに関して少し力を抜いてみる練習をすることです。 Nasir氏はこう言っています。 こうすることで、自分の生産性を本当に高めてくれているのは何なのかを探求するための感情的なスペースが開放されます もう1つは、内省を習慣づけることです。 毎朝でも毎週でもかまわないので、自分自身と向き合って、自分が取っている行動の理由をじっくり考えます。 生産性の回し車を回している人、言い換えると、私が生産性のパラドックスと呼ぶものに陥っている人のほとんどは、オートパイロット状態になっています。 オートパイロットは大きな問題ですが、自己認識が欠けているせいでそうなります。私たちは、自分自身と定期的に向き合っていないのです。 Nasir氏は、せめて1日に1回はモノタスクを心がけることもすすめています。まずは小さなことからはじめましょう。 「多くの人が、テレビを見ながらスマホの画面をスクロールします」とNasir氏は述べます。 そのときの脳は、テレビとソーシャルメディアの処理を交互に行なっていますが、実はこうした状態はとても不安が大きいものです。そのせいで、リラックスできるどころか、むしろ疲労感が高まってしまうのです ほかにもモノタスクの例はいろいろあります。人と話しているときはスマホを置くこともそうです。 メールに専念する時間を決めて、それが終わったら受信箱を閉じるのもそうです。 かつては、Nasir氏自身も「有害な生産性」につながる習慣に苦しんでいたそうです。 「以前の私は、時間がたっぷりあることの喜び、スケジュールが埋まっていないことの喜びを知りませんでした」とNasir氏は述べます。 野心的であることは、絶えずストレスにさらされることとイコールだと思っていたのです ですが、有害な生産性は燃え尽きを生み、それがストレスホルモン分泌の引き金になります。 Nasir氏によれば、そうした状態がひどくなると、慢性心疾患や自己免疫疾患を発症することもあるそうです。 自分の人生から自分自身を切り離してしまい、エネルギーが失われてしまうかもしれません。 「うつ状態というわけではありませんが、自分の人生に積極的に関わっていない状態です」とNasir氏は述べます。 生産性のための生産性がもたらす最大の副作用の1つは、情熱や目的、価値といったものに従えなくなることです。 私たちは誰もが、充実した人生を生きるに値する存在です。ワクワクした気持ちを感じられる人生、自分が設計に関与できるような人生を生きるに値する存在なのです。 小さな習慣を変えていくことで、ひたすら行動する代わりに、ただ存在していることの喜びや安らぎを感じられるようになります。 そして生産性を、より持続可能なやり方で保てるようになるでしょう。 Originally published by Fast Company [原文] Copyright © 2024 Mansueto Ventures LLC.
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