越後妻有と佐渡島、新潟の2つの芸術祭に注目!アートを介して地域の文化に浸る
連載《未来をひらくアート体験》Vol.3
地域性を生かした芸術祭が日本各地で行われるようになって久しい。そのなかでも歴史の長さと規模の大きさでトップといえるのが、新潟県の越後妻有(つまり)地域を舞台にした「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2024年は11月10日まで)だ。 【写真はこちら】新潟県で開催中の2つの芸術祭。記事で紹介している作品の写真はココからチェック! 新潟を訪れるなら足を延ばしたい佐渡島の「さどの島銀河芸術祭」も、2024年は同じく11月10日まで開催されている。ここでは両芸術祭を複数回訪れている筆者が今回特に注目した作品を、新作を中心に紹介する。
【大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ】 ■里山を五感で体験し考える
新潟県の南側に位置する越後妻有は世界有数の豪雪地帯で、過疎高齢化が進む中山間地域。水と土壌に恵まれた日本有数の米どころとしても知られている。そこで2000年から3年に1度開催されている「大地の芸術祭」は今年で9回目。 限界集落を含む自然豊かな地域にサイトスペシフィック(特定の場所でその特性を生かした固有)な現代美術作品を多数展示することで、地域の活性化が起こり、国外からも注目されている。 今回は「五感体験」をテーマに、これまでに制作されてきた作品と新作を合わせて300点以上の作品が展開されている。ちなみに総合ディレクターの北川フラムは新潟出身で、この芸術祭をはじめ、「瀬戸内国際芸術祭」や「奥能登国際芸術祭」なども手がけており、日本の芸術祭シーンをけん引する存在だ。 長野県との県境に位置する秋山郷は標高700メートルの豪雪地帯。「秘境」といわれる山深いこの土地は外界との交流が容易ではなかったことから、独自の文化を育んできた。ここでスタートしたプロジェクト「アケヤマ ―秋山郷立大赤沢小学校―」は一見の価値がある。 会場の旧津南小学校大赤沢分校は、1924年に義務教育免除地の悲願の学校として設立され、2021年に廃校となった。そこに「人間の生活の力をふたたび手に入れるための学校」として、住民、研究者、アーティストらと技術や信仰を学び実践していく場が新たに設けられたのだ。 アーティストの深澤孝史が監修した校内には、呪術的な慣習など独特の文化を踏まえた複数の作家の作品や資料が展示され、見応えがある。