越後妻有と佐渡島、新潟の2つの芸術祭に注目!アートを介して地域の文化に浸る
【さどの島銀河芸術祭】 ■島の過去を知り、未来を思う
遠方から新潟を訪れるなら、佐渡島で行われている「さどの島銀河芸術祭」まで足を延ばすのもありだ。日本海最大の離島である佐渡島は、かつて金の産地として、また北前船の寄港地として栄えた。 一方で島流しとなった順徳上皇や世阿弥がたどり着いた地であり、能や鬼太鼓などの文化を育んできた場所。ここでは「さどの島銀河芸術祭」が2016年から「過去と未来の帰港地」をテーマに行われており、今回は22作家の作品が展示されている。 両津港近くの旧魚市場では、渡辺志桜里が「種の保存法」にまつわるインスタレーション《RED》を展示。 佐渡はトキの生息地としても知られるが、日本産のトキは2003年に絶滅し、中国から贈られたトキの人工繁殖を機に数が増えている。「種の保存法」に見られる、国家の定める「自然」、そのための保護の一方で行われる排除に着目し、自然と人間の関係と複雑に絡まり合うナショナリズムを浮き彫りにしている。
■佐渡出身の思想家の言葉、AIで映像化
戦前の思想家・国家主義者である北一輝の生家では、この芸術祭のアドバイザーに名を連ねるアーティストの宇川直宏による映像作品が見られる。 二・二六事件の指導者として逮捕され処刑された北一輝は、佐渡で生まれ育ち神童と呼ばれたが、事件後はタブーとされた存在。その著作を生成AIに読み込ませて映像化した作品は、徐々に変化していくビジュアル、中毒性のあるサウンド、その言葉によって、見る者を強烈に引きつける。 佐渡の北鵜島(きたうしま)集落に魅せられた映画監督のジョン・ウィリアムズは、限界集落とされる北鵜島で《Kitaushima Art Treasure Hunt》を展開。マップを基に巡ると、自然と人間が共に作り上げた美をあちこちに見つけることができる。 地域芸術祭の大きな魅力として挙げられる、アートを介して地域の文化に浸り、自然や食などを楽しむこと。それをこれらの芸術祭では満喫することができる。さらに現代アートの特性ゆえ、特に新作には、アクチュアルに「今」の問題意識が反映されている。他の地域や世界、そして自分に通じる普遍性を見いだすこともできるだろう。 文:小林沙友里(ライター、エディター)