「読書が嫌いだった」そんな男性が本やアートに出会った結果 『出向くアートサロン』で地域活動
甘いもので釣られた水彩画との出会い
久保田さんの趣味は水彩画ですが、若い頃からの趣味ではありません。本格的に水彩画を描き始めたのは最近のこと。きっかけは、数年前に、お子さんがお世話になっていた子ども食堂に、奥さんと一緒に行ったことだったといいます。 「『子ども食堂の旦那さんって、小学校の校長先生だったらしいよ。月に1回、水彩画を楽しむ会を開いているらしいから、行ってみない?ケーキも食べられるらしいし』と、妻に誘われて参加することになりました」 甘いものに目がないという久保田さんは、ケーキセットに釣られて月に1回の水彩画を楽しむ会への参加を決めたそう。 「絵なんて、学校を卒業してから一度も描いたことがなかったのですが、やり始めたら面白くてはまってしまいました。続いているのは私だけですが…」 久保田さんは精力的に作品を作り続け、やがてギャラリーで個展を開くまでになります。
本と水彩画の融合『アートサロン』を開催
『本と人をつなぎ隊』として、図書館と市内の各施設への橋渡しを続ける久保田さん。施設の貸し出しリクエストを見ていると、塗り絵や折り紙などに関する書籍が多いことに気がつきます。 アートサロンが始まったのは、本を手渡すときの施設利用者との何気ない会話からでした。 「みなさん、絵を描いたり、鑑賞したりするのが好きなんだと気がついて『じつは私も趣味で地元の風景画を描いているんですよ。水彩画ですけどね』などと話していると『ぜひ見せてほしい』『今度、持ってきてよ』などと言われました」 ちょうど個展を開催し、施設の関係者に案内のチラシを配っていたタイミング。個展の案内を施設のスタッフに向けて配っていたところ、思わぬ反応もありました。 「せっかくだから、うちで個展のようなことをやってもらえませんか?」と声をかけてもらい、うまい具合にタイミングが重なり、現実味が帯びます。 実は、以前は米原市や隣接する長浜市で開催される芸術展に、マイクロバスで行っていた久保田さん。しかし、近年は高齢化が進み、バスでの移動や絵画鑑賞自体が難しくなり、芸術展へ行くこともハードルが高くなっています。 「そういった背景もあり、施設に水彩画を持ち込んで『アートサロン』として見てもらおうということになりました」 アートサロンでは、久保田さんの水彩画を見てもらい、昔を懐かしんでもらったり、どこの風景かを当ててもらったりしながら、昔話に花が咲く空間を楽しみます。 実際には「これはどこの風景か分かりますか?」「この山はなんという山か分かりますか?」「黄色い電車、何か分かりますか?ドクターイエローって言って、幸せを運んで来てくれると言われている新幹線なんですよ」という具合です。 大学などでは、介護される人や認知症患者がアートに触れることで、いい影響を与えると研究されています。