「読書が嫌いだった」そんな男性が本やアートに出会った結果 『出向くアートサロン』で地域活動
米原市立図書館の協議会への抜擢
さらに転機が訪れたのは、約6年前のことでした。米原市立図書館の館長が突然自宅を訪問し、協議会の委員になってほしいと告げられたそうです。当時は抜擢された理由には心当たりがなかったとのこと。 「どうやら、2人の子どもたちが幼い頃、よく家族で図書館に通っていたことを館長が覚えていてくださっていたようです。当時は右手に30冊、左手に30冊持って通っていました。米原図書館は一人15冊まで一度に貸し出し可能なので」 図書館の協議会は、主に市民(とくに子どもたち)の読書推進を図るための計画書を作成し、図書館の役割や方向性などを協議するための団体です。 テレビやインターネット、スマホなどの普及により読書離れや図書館離れが全国的に顕著になっています。読書離れや図書館離れに歯止めをかけるべく『本と人をつなぎ隊』が結成されました。
コロナ禍に発足した『本と人をつなぎ隊』
米原市立図書館では、団体貸し出し制度があります。団体のスタッフが図書館に来館すれば、30冊までの書籍を借りられるシステムです。とくに多く利用していたのは、老人介護施設でした。 これまでは正常に機能していた団体貸し出し制度でしたが、コロナ禍には利用団体が激減。その理由は、介護施設のスタッフがさまざまな対応に追われるようになり、図書館に出向くことが難しくなったためです。 「施設に書籍を持って行ってほしいという話になったのですが『図書館では一部の施設に本をお届けすることはできない』と言われました」 本を届けてほしいという団体がコロナ禍に増え、米原市の協議会で大きな議題として取り上げられました。図書館では対応できないとのことで、協議会の委員であった久保田さんが代表を務めている『本と人をつなぎ隊』で取り組むことになったのです。 『本と人をつなぎ隊』では、これまで小学校での本の読み聞かせを中心に活動をしていましたが、本を介護施設に運ぶ活動が加わることになります。 その後、ただ本を運ぶだけでは面白くないと考えて始めた企画が『滑舌トレーニング』や『アートサロン』でした。