どんどん増える「清掃ロボ」、アイリスオーヤマ・森ビル・日建設計が導く現場改革
「日建設計」はロボット導入設計のノウハウを蓄積中
日建設計 デジタルソリューション室 光田 祐介氏は、ロボットフレンドリー環境を実現するための研究開発の状況を紹介した。同社ではビルのオペレーションコストの7割削減を目指している。たとえば大規模集合住宅での配送にロボットを用いる実証実験などを進めて、諸課題を洗い出しながら、スマートビルディングにおける、人とロボットの業務の仕分けを行っている。 ロボットを導入するにあたっては充電場所や保管場所の問題、曲がり角や人の滞留箇所でどうロボットを動かすかといったことを考慮する必要がある。そのために環境側やロボット側でどう設定すれば良いかといった課題に取り組んでいる。そして今後、ロボット導入のための設計コンサルノウハウのためにもデータを蓄積しているという。 日鉄興和不動産、SBR、日建設計ほかによるロボット館内搬送・エレベーター乗り込み 「設計事務所の立場で、なぜロボットをやっているのか?」という質問もよく受けるそうだ。光田氏は「技術革新によってロボット側が進化してできることが増えるように見えても、建物側の障壁が多いと価値が出せない。ちょっとした段差をなくしたり、人とのうまい組み合わせを見いだしてバランスを取ることでさまざまな社会課題を解決できるし、ロボティクスをスマートビルにつなげることでより良い未来を作ることができれば」と語った。
ロボット導入において重要なこと
そのほかの講演やブースでの話も聞いたが、各社が共通して強調していたことは、ロボットを使うためにはまず事前の準備が重要だということだ。産業用ロボットも程度の差こそあれ同じ話だが、サービスロボットが使われる環境は多種多様であり、導入にあたっては環境をある程度「ならす」必要がある。ロボットの足回りの能力はだいぶ向上した。 しかし、人間にとっては平滑な床でもロボットにとっては大きな段差、という状況は依然として存在している。外光や透明な窓も相変わらず苦手だ。ロボットを使わなければ現場が回らないのであれば、ある程度配慮・変更が必要になる現場もあるかもしれない。オーナー側もそれを認識しなければならない。今は汚れにくい床素材も存在する。 PUDU 大規模施設向け清掃ロボット「MT1」 ビルメンフェア2024 もう1つは活用の話だ。限られた人手をうまく使うためには、ロボットを最大限使う必要がある。そのためには現状の作業工程をそのままでポンと入れるのではなく、シフトを組み直したほうがいい。これがうまくできるかどうかが1番の鍵だ。 シフトを組み直すために無駄な手間が頻繁に発生してしまうようなことがあってはならないし、ロボットの運用や置き場所そのほかが現場にとって過重な負担となるものだと、結局使われなくなってしまう。 また、従来2オペだった現場が1オペにできたからといって、それが現場定着率の向上につながるかどうかは別問題だ。人の負担は、単なる物理作業量だけで測れるものではない。自動化で効率化を図っている現場を見ていてしばしば感じることなのだが、ギリギリまで効率化を求めるあまり、人間への精神的負荷が上がってしまって定着率が下がってしまっては元も子もない。その点は各現場でよく考える必要があると思う。関係者全員がハッピーになる現場改革を期待したい。
執筆:サイエンスライター 森山 和道