休み明けの「睡眠不調」に要注意…意外と知らない、なぜ寝だめは意味がないのか「納得のワケ」
なぜ毎日眠るのだろうか
〈1日8時間眠るとすると、人生の3分の1ほどを眠って過ごしていることになる。人生が90年だとすると、約30年を眠って過ごしているのだ。はたして、そこまでたくさん眠る必要があるだろうか。〉(『睡眠の起源』より) 【写真】常識を覆す「脳がなくても眠る」という衝撃の事実…! 私たちはなぜ眠り、起きるのか? 長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。 「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見で世界を驚かせた気鋭の研究者がはなつ極上のサイエンスミステリー『睡眠の起源』では、自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。 〈私は19歳だった大学2年生のとき、ヒドラという不思議な生き物を観察していた。水の中で生活するクラゲやイソギンチャクの仲間で、0.5~1センチメートルほどの小さな生き物だ。 ヒドラには、脳がない。脳をもたず、たった二つの細胞の層からできた体。水の中でゆらゆらと揺れ動く姿は、思考や感情を伴わず、流れに身を任せて生きているようだった。 でも、そんなヒドラにも、自ら体を動かして餌を採り、ときに動きを止めて休む状態がある。それは、まるで眠っているかのようだった。〉(『睡眠の起源』より) 〈睡眠の基本的な要素が、脳をもたないヒドラにも存在することを実証していき、その睡眠をコントロールする遺伝子が、ヒドラと他の動物で共通していることを発見した。成果は、研究をはじめてから3年半ほど経った2020年に、論文として発表される。 「脳がなくても眠る」という事実は、睡眠科学の常識を覆し、「ヒドラにも、他の動物と共通する睡眠メカニズムが存在する」という発見は、世界中で大きな反響を呼んだ。〉(『睡眠の起源』より)
寝だめは意味がない
眠りについて興味がある人は多いが、眠りとは何かというより実用的な疑問を知りたいという人が多くを占めるだろう。 〈よく「寝だめは意味がない」と言われることがある。 実際、ヒトを対象にした調査でも、たくさん眠ったからといって、その後に眠らなくても済むわけではないことが示されている。 もし寝だめすることができるのなら、なんとも便利な話だが、なぜ無意味なのか。「睡眠圧」によるホメオスタシスをもとに考えると、納得できる。 「睡眠圧」は、起きている間に積み上がり、眠ることで解消される。借金が溜まり、返済しているのだが、不便なことに、貯蓄ができない。前もってたくさん眠った(寝だめをした)として、それ以前に溜まっていた借金はゼロになるかもしれないが、たくさん眠ったことで何かがチャージされるわけではない。 いくら寝だめをしても、その後に起きることで、また借金が積み上がるのだ。貯蓄が許されず、起きている代償として借金を背負わされ、眠って返済する。私たちは、そんな自転車操業を、毎日くり返しているのだ。〉(『睡眠の起源』より) つづく「睡眠は「脳の誕生」以前から存在していた…なぜ生物は眠るのか「その知られざる理由」」では、常識を覆す「脳がなくても眠る」という新発見から、多くの人が知らない「睡眠の現象」という正体に迫る。
現代新書編集部