「高校地学」がヤバい…「内容は面白い」のに「異常な履修率」に陥っている理由
1963年に創刊されて以来、「科学をあなたのポケットに」を合言葉に、これまで2000冊以上のラインナップを世に送り出してきたブルーバックス。本連載では、そんなブルーバックスをつくっている編集部メンバーによるコラムをお届けします。その名も「ブルーバックス通信」。どうぞお楽しみください! 【写真】なぜ日本には地震が多いのか…地球科学で見る「列島の異変」と「次の大地震」
記憶のなかの高校理科
「高校のとき、理科は何を選択してた?」 ブルーバックス編集部にいるからか、何気ない会話のなかにしばしば登場する話題です。「受験では物理と化学」「自分は化学と生物だった。物理がてんでダメだったから」「生物だけは真面目に受けてたな」「まったく記憶にございません(キリッ」などなど……文系理系、志望の大学・学部によっても、その答えは人それぞれ。大学受験の思い出とともに、思いのほか盛り上がるトークテーマです。 高校理科は、「物質・エネルギー」(物理)、「粒子・反応」(化学)、「生命・進化」(生物)、「地球・宇宙」(地学)の4つの科目から成り立っています。「物理基礎」「物理」のように、それぞれ基礎科目と発展科目があります。基礎系3科目が必修であることが多いですが、上述のように、受験で用いた科目が記憶に残りやすいかと思います。 そんな「高校理科」ですが、もし地学について熱く思い出を語る人に出会ったら(とりわけ「地学基礎」ではなく「地学」を履修した人なら)、その人との縁はぜひ大事にしてください。じつは、想像以上に「レア」な逸材なのです!
高校地学の履修率は、なんと…!
現在の高校地学は、「地学」「地学基礎」ともに平成 21(2009) 年に改訂された内容で、(1)地球の概観、(2)地球の活動と歴史、(3)地球の大気と海洋、(4)宇宙の構造の4つの大項目から構成されています。 どれくらいの人が、地学を高校で学んでいるのでしょうか。文部科学省「令和5(2023)年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」における「科目の開設状況」を見てみましょう。すると、驚きの現状が明らかになりました。 「生物」の講座を開設している高校は87.7%、「物理」は81.0%、「化学」は78.2%なのに対して、「地学」科目を開設している高校は、なんと7.4%しかありません。裏返せば、92.6%の高校では「地学」の授業が取れない、つまり、ほとんどの高校で「地学」が学びたくても学べない状況になってしまっている、といえます。 履修率でみても、令和1(2019)年度で「0.9%」と、衝撃的な低さです(吉田幸平、高木秀雄「高等学校理科『地学基礎』『地学』開設率の都道府県ごとの違いとその要因」『地学雑誌』129、2020年)。 その最大の理由は、入試科目に「地学」を選択することを不可にしている大学が多いことといえるでしょう。実際に、共通テスト「理科2」の受験者数をみても、物理(14万6041人)、化学(18万2359人)、生物(5万7878人)にくらべて、地学はわずか1356人と明らかに少なくなっています。