別れ話中 パキスタン人たちが刃物で乱入 妻を奪われたときの「恐るべき掟」 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<23>
《輸入通販の拠点を香港に移し、仕事は順調にスタートした。ところが一人娘がいなくなり、「お金を持ってこい」との電話がかかってきた》 電話で「クスリをやっているだろう。娘はここにいる。お金を払え」と。「ちょっと待って、クスリって何のこと? 育毛剤とか、豊胸クリームとかは扱っているけど」「何、バカなことを言っているんだ。分かるだろう」。危ないクスリなど見たこともありません。で、「じゃあ、いくらなの?」って聞いたんです。すごい金額だったら、僕も躊躇(ちゅうちょ)した。それが70万円くらいなんですよ。 最初は警察に連絡しようと思っていたのですが、その金額なら払おうと決意しました。で、僕は「待ち合わせはザ・ペニンシュラ香港のロビーで」って言ったんです。香港で一番有名なホテルですから。そうしたら「ふざけてんのか」って。指定されたのは九竜地区の山奥の公園です。そんなところに行けば、何をされるか分からない。「暗いところじゃなくて、明るいところにしましょう」って言ったら電話を切られた。もう行くしかないですよね。 電車とタクシーを乗り継いで公園に着きました。そこにはフィリピンの男性がいて、「お金は?」と言うので渡したんです。で、「娘は?」って聞いたら、「もう戻っているよ」って。携帯電話は持っていませんでしたから、その言葉を信用するしかない。帰宅したら娘は無事、家に帰っていました。最初からどこかに隠していたみたいでしたね。 《今度は奥さんが…》 このころは東京と香港を1週間ずつ、往復する生活だったんです。同じくフィリピンから来たメイドさんたちが同居していたとはいえ、妻にはさびしい思いをさせていたと思います。で、あるとき香港に戻ったら、妻がいない。いつもは騒がしいメイドさんたちも黙っている。で、「妻はどこに行ったの?」って聞いたんです。すると、「彼氏ができて出ていった」と。 あぜんとしましたが、とにかくその男性と3人で話し合うことにしました。連れてきた香港人の男性を見てびっくりです。僕は香港にいるとき、毎朝必ず妻と娘の3人でマクドナルドに行っていた。そこでフィッシュバーガーを食べる。僕はお肉が食べられないからね。そのマクドナルドには地下道をくぐって行くのですが、その地下道に路上生活をしている若い男性がいたんです。かわいそうだなと思って、ハンバーガーやポテトをあげていた。で、妻が連れてきたのはその男性だったんです。 優しい妻は、僕が東京にいるときもこの男性と毎朝会って、感情が移ったのでしょう。妻に「娘はどうする?」と聞くと、「あなたにあげる」。これでもうおしまいだなと思いました。
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