”シブコ”のリベンジ戦はいつ? なぜ約4か月遅れで開幕した女子プロゴルフツアーの次戦が決まらないのか
ゴルフの国内女子ツアーは「アース・モンダミンカップ」(6月25日から29日)でようやくシーズンが始まった。渋野日向子(21、サントリー)が予選落ちする波乱の大会を制したのは渡辺彩香(26、大東建託)で5年ぶりの復活V。黄金世代の田中瑞希(21、フリー)が3位に入り、“21世紀世代”の西郷真央(18、大東建託)が5位タイに食い込むなど、新型コロナウイルスの感染拡大により約4カ月遅れで開幕した女子ツアーは話題を集め盛り上がった。ツアー関係者もひと安心と言いたいところだが、実は、今後の開催は確定していない。 7月の4試合はすでに中止が決定し、それ以降も8月の「CATレディース」と10月の「マスターズGCレディース」が早々に中止を決めている。今季第2戦の実現は、最短でも8月14日からの「NEC軽井沢72」となる。この大会の開催可否は今週にも発表される予定。開催される可能性は高いと見られているが、まだ100%決定ではない。 6月19日に開幕したプロ野球は、政府の指針に沿って今月10日から最大5000人ほどに制限した観客を入れていくことで調整が進んでいる。しかし、ゴルフ界の女子ツアーは無観客開催の実施にも二の足を踏んでいるのが現状だ。 なぜなのか? 野球やJリーグなど他のプロ競技と違い、国内ゴルフのツアー競技は大会ごとに異なる主催者、いわゆる冠スポンサーが最終的な開催可否の決定権を持っている。男子のJGTO(日本ゴルフツアー機構)、女子のJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)はツアーを統括する団体ではあるが、あくまで公認するだけにすぎない。 JLPGAが単独で主催する試合である「コニカミノルタ杯日本女子プロ選手権」も経費は特別協賛のコニカミノルタが負担し、開催コースも1億円ともいわれる大金をJLPGAに払っている。
1988年のツアー制度施行前から続く旧態依然とした興行形態のいびつさは今回の新型コロナ禍で改めて露呈した。 「アース・モンダミンカップ」は大会主催者のアース製薬の強い意向で開催にこぎつけた。緊急事態宣言が全国的に解除されたことも背景にあるが、同社の大塚達也会長は「やることを前提に準備を進めていた」と話し、選手・キャディーを含む大会関係者全員に実施した821人分のPCR検査の費用も全額負担した。1700万円はかかっていると推測される額だ。 トーナメントを開催するのに必要な運営費は、賞金総額の約3倍と言われている。総額1億円なら3億円。これだけの大金を支払ってまで企業が、大会を主催するのは「スポーツを通じての社会貢献」などの企業理念の”建前”とは別に、プロアマ戦に取引先のVIPらを招待し、ビジネスを円滑に進める”本音”の部分が大きい。 「プロアマ戦と表彰式さえ晴れれば大会は大成功」が主催者ファーストの広告代理店など運営サイドの昔からの考えで、新型コロナウイルスの影響で、「前夜祭もプロアマ戦もできないのなら開催しても意味がない」というのが偽らざる本音なのだ。 開幕した女子ツアーが次々と続かない理由のひとつがこれ。もちろん、大会を主催するスポンサーが社会的な影響を考え、慎重となり大会の中止、延期を決定しているという事情もある。 新型コロナの時代に大会を行い、もし感染者が出れば企業のイメージダウンは免れない。リスクを冒してまで大会を開く意味はない。さらに新型コロナ禍による経済的なダメージもあるだろう。 ゴルフに金を出す余裕がない企業があっても不思議ではない。大会の中止発表が大会ごとに発表されたり、「アース・モンダミンカップ」の開催が発表される前から7月以降の大会の中止が発表されてきたのも、すべては主催者の思惑の結果だった。