ホモ・サピエンス起源の謎―母なる大地アフリカをいつ、なぜ出て行ったのか?
謎が残されている「出アフリカ」仮説
我々ホモ・サピエンスの祖先は、具体的にいつ、どのようにして母なる大地アフリカからユーラシア大陸などへ移住したのだろうか? そしてその理由とは何だったのだろうか? この詳細なプロセスを説明するためのアイデアが、「The Out of Africa(出アフリカ)」という仮説として、2000年代初め頃に古人類学者によってまとめられはじめた(Stringer 2003等)。いわゆる人類の起源(ホモ・サピエンスの先祖)はアフリカであり、現在も活発に行われている、アフリカの外へやって来た具体的な時代の測定に関する研究のきっかけとなった。 遺伝子のデータによると、ホモ・サピエンスが「出アフリカ」を試みたのは、更新世の間に(少なくとも)複数回あったようだ。その中でも二つの大きな移動・移住トレンドが研究者によって提唱されている。最初のもの(最古の記録)は「約27万年前」、そして二度目の大きな移動が「11.5万年~13万年前」という推定値が、最近の研究により出ている(Bae等2017参照)。 ―Bae, Christopher J.; Douka, Katerina; Petraglia, Michael D. (8 December 2017). "On the origin of modern humans: Asian perspectives". Science. 358(6368): eaai9067. doi:10.1126/science.aai9067. こうした年代の推定はまだ研究の余地があり、今のところ研究者によって数値に少し開きがあるようだ。そのためニュースや教科書、Web上の文献、研究論文で異なる数値が見られることもある。 そして、第一の出アフリカが起きたとされる年代にも注目したい(上の図参照)。27万年前という数値は(繰り返すが)遺伝子のデータをもとに推定された値だ。そのため化石記録(=19.5万年前のイスラエルが知られている限り最古の記録だ)と大きな開きがある。 今後はこの年代のギャップ ── 「27万年から19.5万年前の間」 ── を埋めるべき化石の証拠を探す発掘調査が行われることが想像される。その際、イスラエル近郊に目をつければいいのか、それとも我々のイマジネーションを(いい意味で)大きく裏切るような場所から新発見のニュースを耳にするのか。今から楽しみでならない。