バレーボール元日本代表の益子直美さんと考える、スポーツとアンガーマネジメント。「監督が怒ってはいけない大会」とは?
「監督が怒ってはいけない大会」のこれからと日本のスポーツ界の未来
2024年の3月には、秋田で『第一回 監督が怒ってはいけない空手大会』が開催。「ヒーローズ アワード」を受賞したことがきっかけで、“怒らない指導”を推奨する活動が他の競技を含め、広がりつつあります。当初、「監督が怒ってはいけない大会」は10年で終止符を打つことを目標にしていたそうですが、まだまだ必要だと感じているそう。 「日本は海外に比べて、メンタルコーチングやアンガーマネジメントが遅れています。特にスポーツ界は差があります。そのため、最近はビジネス界で活躍している人たちに介入してもらうことも増えてきました。ようやく今、変わりつつあるように思います。 純粋に競技を愛し、主体性のあるアスリートがもっと増えてくるといいですね。そこに辿りつくまでには、厳しいことやつらいこともあったと思いますが、そういったアスリートは好きという気持ちとその競技をとても楽しんでいるように見えます。そういう、スポーツを楽しむ気持ち、好きという気持ちを育むお手伝いをこれからも続けたいです。 もちろん“怒り”による指導がダメというわけではないですが、怒りの指導を肯定するのも、言葉にするのは難しいと感じました。例えば、『監督が怒ってはいけない大会』という名前ではありますが、実は怒られることもあります。ルール、マナーを守れなかった時、取り組む態度や姿勢が悪かった時など、しっかり線引きをしてルールを作っています。 アスリートの中には怒りの感情を上手くパワーにかえている選手もいます。時には自分や仲間を鼓舞するときに怒りのパワーを使うことも必要ですし。怒りを誰に向けるのか、その感情のコントロールをしっかり行うことが重要なのではないかと。 今年のパリ五輪は、球技のチーム競技が多く出場しますよね。私たちの頃からすれば、これはとてもすごいことです。それだけ、いまの日本のスポーツ界は明るいものになりつつあるのではないかと。私もその一端を担えたら、これほど嬉しいことはありません」。
撮影/大見謝星斗 取材・文/鈴木啓子 撮影協力/鎌倉プリンスホテル 協力/日本財団HEROs