バレーボール元日本代表の益子直美さんと考える、スポーツとアンガーマネジメント。「監督が怒ってはいけない大会」とは?
連載「アスリート×社会貢献活動 スポーツでつながる、広がる社会課題解決の輪」
パリ五輪を目前に控え、スポーツ熱がますます高まっています。選手たちの躍動に声援を送るとともに、応援している競技や、競技にまつわるアスリートが取り組む社会貢献活動にも注目してみませんか。スポーツをテーマに、現代社会が抱える課題や未来について考えていく新連載です。 【写真】バレーボール元日本代表の益子直美さん 第1回のゲストは、バレーボール女子日本代表として世界選手権やワールドカップなど数々の出場経験を持つ益子直美さんです。 9年前から「監督が怒ってはいけない大会」を開催している益子さんは、アンガーマネジメントファシリテーターの資格をいかして講演を行うなど、幅広いフィールドで取り組みを行っています。今回は、アスリートと指導におけるハラスメント問題について話を伺いました。
益子直美(ますこ・なおみ)さん 1966年、東京都生まれ。中学からバレーボールをはじめ、高校3年秋に全日本代表に選出。日本代表としても世界選手権やワールドカップに出場。競技引退後は、タレント、スポーツキャスター、解説者として活躍。21年に日本バレーボール協会理事、スポーツ庁スポーツ審議会スポーツ基本計画部会(第2期)委員を務め、23年6月、日本スポーツ少年団本部長に就任。
好きではじめたバレーボールが、“怒り”による指導で嫌いに
「実はバレーボールが嫌いだったんです」と屈託のない笑顔で話す益子直美さん。益子さんといえば、バレーボール女子元日本代表として世界選手権やワールドカップなど国際舞台で活躍してきた、言わずと知れたトップアスリートです。嫌いになった理由は、「“怒り”を使った指導で、自信を喪失してしまったから」だと言います。 「私は漫画『アタックNo.1』が好きで、バレーボールをはじめたんですよ(笑)。漫画では厳しい世界として描かれていましたし、実際に厳しいだろうという覚悟のうえで門戸をたたいたのですが、想像以上に過酷でした。中学、高校と全国大会に出る強豪校だったこともあるのかもしれませんが、怒られるのは当たり前、ひどいときは殴られたことも。チームメイトの中には怪我をした人もいましたが、当時は珍しくない光景でした。正直、パフォーマンスを発揮するどころではなかったですね。 ただ、そのような厳しい指導の中でもトップに登りつめていく人はいる。怒られるたびに委縮したり、自信を失ったりする自分は、アスリートには向いていないと思うようになり、いつしかあんなに好きだったバレーボールを嫌いになっていました」。