通知表をやめて全国から注目される【神奈川県・香川小学校】。公立小学校なのに子どもファーストな学校改革が叶った理由は?
通知表をなくしてからの先生・子どもたちの変化は?
‐‐通知表をなくしたいと思った先生たちには、どのような考えや想いがあったのでしょうか? 國分先生:地区によって異なりますが、子どもたちがすごく成績を気にしているんですよ。先生や友だちに、良いか悪いかで評価されているからすごくピリピリしているんです。 先生たちが普段の授業で「その意見すごくいいね」と褒めてくれるのに、テストの点が取れないと通知表では評価されない。そうすると子どもたちは、「先生たちっていつもあんなに褒めてくれるのにテストで点数取れないとダメなんだよね」と思ってしまう。 自分としては頑張ったのに、いくら頑張ってもだめなんだなと落胆する子がいて、それを目の当たりにしている担任たちも「本当にこれでいいのか?」と、疑問に思うことが多かったんです。いいところを伝えたいのに通知表の評価が先走りしてしまう。 そうすると子どもたちの自己肯定感が高まらない。先生たちはなんとかしたいという想いがあって。評価を失くしたら変わっていくきっかけになるのではないかと思ったんですよね。 –通知表がなくなってから授業の内容や先生に変化はありましたか? 國分先生:通知表をなくしてから、テストに丸はつけるけど点数をつけることをやめた先生がいたんです。そうしたら、子どもたちが自分の間違えを素直に受け止めて考えるようになったそうです。 今までは、点数に気を取られていたけれど、「ぼくここ間違えたから教えて」と率先して質問するようになった。点数を付けないだけで学習の姿勢も変わってくる。また、職員室での先生たちの会話も変化していきました。生活面だけではなく、学習をどのように進めていくのか意見を交わすようになりました。 ‐‐子どもたちには、どのような変化が感じられましたか? 國分先生:勉強が苦手な子は、「通知表がなくなったらクラスのみんなが意見を聞いてくれるようになった」と話してくれました。今までは行事のときなどに意見を言っても、成績がよくない子の意見は通らず、成績がいい子たちが優先されてしまっていたのが変わったと。それは、子どもたちの中の見えない序列なんですね。そういうものが少しずつ消えていけばいいなと思っています。 ‐‐子どもたち同士だけではなく、先生と子どもたちの関係も変わりましたか? 國分先生:今までは正解を求める、正しいことを認めるのが先生だったけど、いまは違うみたい…と子どもたちの認識が変わっていきました。 例えば、高学年になると、間違ったらどうしよう…と授業中にだんだん手を上げなくなることがあります。先生たちも無意識に授業の流れで、正解を求めてどんどん次にいくと正解しなかった子は「先生に相手にされないから答えるのをやめよう」と思ってしまう。 でも、正解ではなかったとしても「それもいい考えだね。みんなどう思う?」という授業の流れに変わったら、意見が言えなかった子たちが「自分の考えを言ってもいい場なんだ」と思い、発言が増えて授業が活発になる。 子どもたちは繊細なので先生たちのなにげない言葉が大きなきっかけになることがあります。良い方にも悪い方にも変わりますよ。先生が変われば子どもが変わる。子どもが変われば保護者が変わる。と思っています。