ゴジラ-1.0と「君たちは~」アカデミーW受賞の瞬間、各国の記者から大歓声が起きた…沸いたのは日本だけじゃない 現地で実感した多様化と日本映画への期待
私の背後に陣取った地元アメリカの新聞記者は「アメリカの観客は(映画本編が終わって)エンドロールが始まると席を立ってしまう。映画の最後に説明された『木漏れ日』のワードを目にした投票者は少ないだろう。映画館にもシートベルトを設置すべきだ」と遠回しに評価した。 発表の結果、オスカーはやはり「関心領域」が獲得した。しかし別のアメリカの記者は「『PERFECT DAYS』を見て東京に行きたくなった。11月の飛行機を予約した」と話す。名刺交換すると「東京に着いたら電話する。(映画に登場する)あの地下の居酒屋に連れて行って」と約束させられた。ホントに来るかな? ▽シュワルツェネッガーに呼ばれたゴジラ 「ゴジラは取るって。間違いない」。視覚効果賞の発表が近づくと、地元ロサンゼルスのスペイン語紙記者が安請け合いを連発した。「ゴジラが怖かった」と繰り返す。賞のプレゼンターとして、アーノルド・シュワルツェネッガーさんとダニー・デヴィートさんの2人が登場すると、記者会見場はザワ付いた。ハリウッドスターの2人は「バットマン」シリーズでそれぞれ怪人を演じたことがあり、怪獣のゴジラに期待する記者らが勝手に〝悪役〟同士を結びつけて盛り上がっている。
シュワルツェネッガーさんが「ガッズィーラ・マイノス・ワン(と聞こえた)」とコールすると、授賞式会場だけでなく、記者会見場にも大歓声が上がった。 ▽合わせ鏡のオッペンハイマーとゴジラ 記者会見場に「ゴジラ」の山崎監督ら4人が登場すると、またもや歓声。記者の一部は、授賞式の中継映像を見たりパソコンで作業したりしていたが、質疑で指名してもらった私が質問すると、一斉に手が止まった。 「今回のオスカーでまるで合わせ鏡のようにも見える『オッペンハイマー』との関係をどう思うか」と尋ねたのだった。 アメリカ映画の「オッペンハイマー」は、原爆を開発した物理学者の苦悩を描く重厚な人間ドラマだ。今回のアカデミー賞で作品賞など計7部門で受賞した。一方、日本のゴジラは、その原爆で身体を焼かれて放射線を浴び、巨大化して日本に災厄をもたらす。 全く異なる視点から原爆を捉えた2本の映画をどう考えれば良いのか。日本の記者として、どうしても聞いておきたかった。