公認ファンサイト『J’s GOAL』はなぜ消えたのか?
2014年における旧公式サイトのユニークユーザーが約1000万人。同じ測定方法で『J’s GOAL』のそれを調査したところ、昨年4月からの9カ月間で500万人だった。年間のそれに換算すると700万弱の規模となり、ユーザーの重複率が「推定値で6割強に達した感がありました」と出井本部長が続ける。 「サーバーを2つ立てて、ダブルで運用体制を走らせて、実際に発信しているコンテンツがすごく寄ってきたなかで、結果として遅れてしまったのがスマートフォンなどへの対応でした。特に公式サイトはほとんど対応できていなくて、お恥ずかしい話ですが、スマートフォン用に画面を無理やり見やすくすることができたのが昨年の夏なんです。公式サイトでファンやサポーターへ向けたコンテンツを発信できるという発想に立てば、パソコン向けのウェブサイトを2つ持つのではなくそれらを統合しながら、それまで使っていたもうひとつのパワーをスマートフォンやフェイスブック、ツイッター、場合によってはラインといったSNSなどの複数のデバイスを拡充させていったほうが、結果として幅広い層に対して利便性が高まるのではないかと。非常に悩ましい決断でしたが、そのように至りました」 そこで、ファンやサポーターから関心を寄せられている『J’s GOAL』のフォトニュース、見どころ戦評、クラブリリースなどのコンテンツの取り扱い問題が発生する。新しいサイトの下部には問い合わせのフォームが設けられている。ファンやサポーターから寄せられた意見のなかには、以下のようなものも多く見受けられた。 「統合というお話でしたけど、『J’s GOAL』のアーカイブは捨ててしまったのでしょうか」 実質的な閉鎖だという指摘だが、実際はどうなっているのか。実に13年間にわたって毎日のようにアップされ、サイト内に蓄積されてきた膨大な量に及ぶデータは現在、Jリーグ内でストックされている。出井本部長は「アーカイブを捨てるつもりはないですし、実際に捨ててもいません」とこう続ける。 「『J’s GOAL』はサイトの作りが異なっていて、たとえば見出しと伝聞記事をリンクさせる指示がかなり複雑なものになっています。かなりの人的パワーをかけながら移さざるを得ない状況に直面したなかで、新しいサイトをオープンさせるときにサーバーでトラブルが発生して、当初予定していた各種作業をなかなか終えることができませんでした。その結果として、アーカイブの移行作業検討も含めて、さまざまな作業がすべてずれてしまったんです。ファンやサポーターの方々には本当に申し訳ないですけれども、ようやくフォトライブラリーが復旧したように、段階的に移していく方法を取らざるを得ませんでした。『J’s GOAL』のアーカイブがゼロになってしまうのでは、という不安を抱かせた点に関しては、もう少し丁寧にコミュニケーションを取っていたらといまでは反省しています」 現在はJリーグ事業部内にある既存のウェブ系担当、Jリーグメディアプロモーションの『J’s GOAL』担当、そして広報部スタッフからなるチームでディレクション体制を形成。日本サッカー協会の公式ホームページも手掛けるウェブ制作会社が実働部隊として、新サイトのコンテンツを拡充させていく。 たとえば新しい公式サイトでは対戦カードの画面から、それぞれのテレビの放送スケジュールやチケット購入画面に移行できるようになっている。新しいファン層を取り込むために新設した機能であり、今後もJリーグにとって喫緊の課題であるライト層の獲得を念頭に置いていくという。