公認ファンサイト『J’s GOAL』はなぜ消えたのか?
動画については、前出の『Jリーグ動画祭り‐2014年夏‐』を総合スポーツサイトの『スポーツナビ』でも同時に展開したことで、あるヒントを得たと出井本部長は言う。 「Jリーグの公式サイトと『スポーツナビ』さんとで、見られる動画の種類がまったく違っていたんですね。我々のサイトでは試合のハイライトがよく再生されたんですけど、『スポーツナビ』さんにはライトなファンがよく訪れるためか、たとえば大久保嘉人選手のゴールや柴崎岳選手のプレーなど、個人に寄ったものが非常によく再生されていたんですね。その意味では気になる選手の名前をファンの方々が検索すれば、その選手の動画を見られるようにコンテンツを増やしていきたい。映像に関する権利を持っているテレビ局側としっかりと調整しながら、スマートフォンで通勤や通学の電車内などで気軽に見られる長さに編集したものを多くそろえて、面白いと思っていただいたらすぐに拡散やシェアしてもらえるようにしていきたいと考えています」 もちろん、長くJリーグを支えてきたファンやサポーターの要望をないがしろにするつもりもない。彼らと共有してきた貴重な財産でもある『J’s GOAL』のアーカイブを、できるだけ早く新しい公式サイトに移行させていきたいと出井本部長は今後の展開を語る。 「膨大な量のすべてを移すのはおそらく難しいところですが、できれば直近数年分のなかからご要望の高いものに優先順位をつけながら移していきたい。要望が多いもののひとつは、ファンやサポーターからの情報が蓄積されたスタジアム情報やスタジアムグルメですね。これには『初めてJの試合を見に行く友だちを誘うときに使えた』という声が多く寄せられています。試合前後の選手のインタビュー系のコラムもそうですし、今後に関しては特にJ2、J3の試合記事がちゃんとアップされるのか、ということに対する心配もいただいています。それぞれの試合後には公式記録を基にしたサマリーは当然アップしますし、すべての試合で『J’s GOAL』のような分厚い署名記事をアップするのは難しいかもしれませんが、状況を見ながらポイントとなる試合を取り上げていきたいと考えています」 新しい公式サイトがスタートした2月1日から27日までの集計で、ユニークユーザーが約100万人を数えた。昨年の同時期における旧公式サイトの数字が75万人弱だったことを考えれば、新しいファンや『J’s GOAL』だけを見ていたファン・サポーターが数多く訪れていることがわかる。 だからこそ、新しい公式サイトにおける今後の展開が大事だと出井本部長は力を込める。 「ウェブサイトには『これで完成』というものがないと考えています。皆さんに関心をもっていただくためのきっかけのひとつとして、その時々のご要望に合わせながらどんどんよくしていきたい。旧公式サイトと『J’s GOAL』の両方のユーザーに満足してもらえて、その上でライトユーザーを意識して組み立てていくには、これからもトライ&エラーでコンテンツを投入していって、皆さんから支持を得れば残し、そうでなければ入れ替える作業を続けていくしかないですからね」 新たなコンテンツのひとつとして、たとえばデータスタジアム株式会社の協力を受けながら、90分間における両チームの総走行距離などの情報を試合サマリーとともに無料提供していくことも検討されている。 3月7日に明治安田生命J1が、翌8日には明治安田生命J2が開幕する。特にJ1は新たなファン層を開拓するために、従来のファンやサポーターの猛反対を押し切る形で2ステージ制を復活させた。いままで以上にJリーグに対する関心を呼び込むためにも、ひとつに統合された公式サイトは「接点」としてますます大きな役割を担っていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)