「あなたの選択肢は世界」インターナショナルスクールに熱視線 通わせる親の期待と悩み #令和の親 #令和の子
「選択肢は世界」と言えるように
自営業のリカさん(36歳、仮名)は、9歳の長女を横浜の歴史あるインターに通わせ、5歳の長男も同校に入学する予定です。 日本の認可保育園に通っていた長女は2歳で「より教育的な要素を採り入れたい」と英語のプリスクールに通わせました。年中になると、周囲の保護者が話題にするのは、小学校受験するかインターに進学するか、ということ。 リカさん自身は地方出身で、小中高と公立校だったため、当初は公立校に行かせるつもりでした。リカさんは親の「これからの時代は英語を」という方針で、小学校から英語を習い、高校で1年間アメリカに留学するなど英語力を磨いたおかげで、日本で就職して行き詰まった時、外資系企業へ転職し、道を開けた経験がありました。 「子どもたちが大人になったときはさらに国際化が進んでいるはず。言語をバリアにせず、『あなたの選択肢は世界』と言ってあげたい」 公立校も見学しましたが、中学受験に向けて夜遅くまで塾に通う子どもたちを見ると、「今後も受験の心配をせずに過ごしてほしい」という気持ちが強まり、国際色豊かで高等部まであるインターを進学先に選んだそうです。 しかし学費はかさみます。長女と長男の学費となると年間600万円。年々値上がりしていると感じ、最近は「多様で質の高い教育は日本でなくても受けられる」と考えて、欧州への移住を検討し始めているそうです。
宇多田ヒカルで広く知られた「国内インター校」の起源
日本ではもともと、戦前から外国人の「民族学校」があり、戦後にインターナショナルという多国籍な考えに基づく学校が増えていきました。日本人に広く知られたのは、1990年代後半に宇多田ヒカルさんがデビューした時。「日本人でもインターナショナルスクールに通える」と知られ、「進学先」として選択肢に入れる人が増えたといいます。 現在、インターナショナルスクールは小中高合わせて108校あり、3万人(うち日本人は2万人)が通っています。保育・幼稚部ではさらに増えて全国で800園あり、5万人が通っています。 国際教育ジャーナリストの村田学さんは「英語ができる幼児が増えていることで、インターに行きたいという需要は伸びていく」と注目します。 これまで国内での進学先が狭まると懸念されていましたが、最近では国が、国内の大学に対して、国際的に通用する大学入学資格を与える教育プログラムの「国際バカロレア」などを活用した入学者選抜を推進しており、インター生にとっても国内の進学の門戸は格段に広がっています。 世界規模でインターに優秀な教師を集めるため競争が激化しており、円安の日本でも寮費を含めて年間1000万円かかる学校が現れるなど、全体として学費は値上がりしていますが、それでも「小学校からの塾通いで受験戦争を勝ち抜き有名大学」という既存の学歴の「うかいルート」としてインターを選ぶ人もいるといいます。 しかし、村田さんは「インターを出て英語ができても、社会で活躍できる、というわけではない」と、安易な選択には懸念も示します。インターからアメリカの大学に進学して日本社会との差にショックを受けてしまう人や、日本で就職して挫折する人も見てきたからです。