「BSもPLも見てます」経営する作家・今村翔吾氏が考える書店ビジネス
前回、書店冬の時代に、書店を愛している人たちの力をもう一度集結させるビジネスモデルが「シェア型書店」だと、今村さんはおっしゃいました。 【関連画像】作家、書店経営者 1984年、京都府生まれ。関西大学文学部卒業。ダンスインストラクター、作曲家、滋賀県守山市の埋蔵文化財調査員を経て、2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で作家デビュー。21年大阪府箕面市の書店「きのしたブックセンター」を事業継承。23年、佐賀市に「佐賀之書店」を新規出店。24年3月からシェア型書店の「ほんまる」プロジェクトをスタート。(写真提供:今村翔吾事務所。全国47都道府県の書店、学校、公民館を回る「今村翔吾のまつり旅」中のカット) https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00621/031100002/?SS=imgview&FD=-755482518 「シェア型書店」:「貸し本棚屋」「棚貸し書店」などとも呼ばれる本の販売業態。店舗のオーナーが30センチ四方ほどの本棚を個別に貸し出して、その賃貸料で主な収益を得る。オーナーが仕入れ・販売にかかわることなく本を売る新しい書店の仕組みとして注目されつつある。(図:ほんまる) この「シェア型」モデルの優位性は、どのあたりにあるのでしょうか。 今村翔吾さん(以下、今村):戦国時代にたとえると、毛利家が治めていた土地の半分を豪族たちに任せて、その豪族と連合して「一緒に国を守ろうぞ」といった、「唐傘連判状」のイメージじゃないかと思っています。 毛利家はそれで領地の運営リスクを減らしつつ、領土を守って、さらに発展させることができる。全部の権益を握るのではなく、共存の仕組みをつくることで、毛利家は力を蓄えた。 持てる者が場所を用意し、有為の出店者を募って共に栄える。いい仕組みのように思えますが、なぜ、これまで採られてこなかったのでしょう。 今村:逆に言うと、書店業界にシェア型、棚貸し、という業態が出てきたということは、この業界がよほど追い詰められているという証左でもあると思います。 確かに既存の業態だけで儲かるなら、他の力を借りる必要はありませんね。 今村:そして前回申し上げたように、書店ビジネスは新規参入したり継続したりするのが意外に難しく、新しいアイデアがなかなか出てこないわけです。 でも、儲けるのは難しいけれど、本屋さんを愛する人、自分でやりたい人は、実はたくさんいる。 これって、個人が書店を持つまでのハードルがあまりにも高すぎるからで、そこらへんに市場に埋めがたいギャップがあるということです。 初期投資で1000万円以上が必要だったり、独特の商習慣があったりして、在庫管理だけでも大変だ、と前回に伺いました。 今村:そう、やりたい人とビジネスの間がかけ離れていて、その間をつなぐ仕掛けがなさすぎるんです。