「BSもPLも見てます」経営する作家・今村翔吾氏が考える書店ビジネス
今村:前回の繰り返しになりますが、僕は、本屋さんは町に絶対必要な存在だと思っています。シェア型書店の仕組みを通して、本好き、本屋さん好きの人たちが、いわば「ミニ本屋さんの経営」を楽しんでくれて、そこから「本当に書店を経営してみたい」という人が出てきたら、サポートできる仕組みまで整えていきたい。 町の本屋さんを復興できる人を育てる。それがこのプロジェクトのゴール設定なんですね。 今村:だからこそ、シェア型の業態を一時の流行にしないで、ここでしっかりとつくり上げることが必要だと思っているし、それに取り組むことにワクワク感もあるんですよ。 ●PLもBSもキャッシュフローも見ています 今村さんは本業の小説で、若くして直木賞、吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞などなどメジャーな賞を総なめにされています。現在もレギュラーの連載、執筆が4本。それだけではなく、テレビやラジオにも定期的に出演されています。さらに書店も2店、経営されています。よく、こんなことを考えて、ビジネスとして動かすだけの時間がありますね。 今村:僕は作家であるとともに、もともとビジネス的な人間だと思うんです。22年には本にまつわるプロジェクトを行う一般社団法人「ホンミライ」を設立して代表理事に就任しました。自分の事務所の経理についても、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、キャッシュフローを月に1回、スタッフと一緒に必ず確認しています。 作家というと、無頼だったり、浮世離れしたり、というのが前世紀のステレオタイプですけれど、それとはだいぶ違います。 今村:それは僕が育った家の環境が影響していると思います。僕の父親は教師だったのですが、1997年にダンスチームを創設して、ダンス事業やライブ活動を通じて若い世代を育成。後に起業した人なんです。 僕もその活動にずっと関わっていて、舞台に立ちつつ、生徒を教え、さらに会社の経営も行っていましたので。 今村さんの「前職・ダンスインストラクター」という経歴を見て「?」でしたが、そういうことだったのですね。 今村:そのような経営視点で書店ビジネスを見てみると、従来型の本屋さんは厳しいけれど、シェア型書店の形なら勝算があるな、と思い至ったわけです。 今村さんという人間が持つ執筆と経営のリソースの配分は、どのようになっているのでしょうか。 今村:おかげさまで僕の本はデビューしてからずっと、右肩上がりで読者の方に読まれています。本当にありがたいことです。時間の使い方でいうと、とにかく移動中でも何でも、ずっと書いていますね。車の中で書く、飛行機の中で書く、フェリーでも書く、ジェットボートでも書く。極論、歩いている時でも書きます。 歩きながら? 今村:外で人と待ち合わせして、約束の時間まで15分あったら、片足を縁石とかに上げて、そこにパソコンを乗せてこう、カタカタと。自転車に乗っている時以外、全部書けます。 ……その執筆とは別にビジネスのスキームも考えているわけじゃないですか。 今村:それは風呂の中でやっています(笑)。 お風呂の中は確かに書きにくそうですが。 今村:浴槽にパソコンを落としたら、さすがにダメージがでかすぎるでしょ(笑)。ですから、風呂とかトイレとかの時間はビジネスを考えることにしています。