マジック「12」点灯のソフトバンクは本当に西武とのV争いで優位に立ったのか?
前日に首位に立った西武とソフトバンクの首位決戦の最終ラウンドが12日、メットライフドームで行われ、ソフトバンクが3-2で勝利。1日で首位を奪還して待望のマジック「12」が点灯した。圧巻だったのは、先のロッテ戦でノーヒットノーランを記録したエース・千賀の8回1失点の力投だ。7回には一死二、三塁のピンチを連続三振で切り抜けた。残り12試合でのマジック「12」。まだまだ優勝争いは続きそうだが、ソフトバンクは一歩優位に立ったのだろうか。
魂のフォーク4連投
これをエースの責任感と呼ぶ。 最後の直接対決の初戦を落として首位陥落。勝った方にマジックが点灯するという大一番を任された千賀は「よけいなことを考えずにマウンドで集中。マウンドで自分のことをしっかりやるだけ。それだけの気持ちでいきました」という。 ロッテ戦のノーヒットノーランから中5日。持続した集中力で5回一死までパーフェクトピッチング。そして勝敗を分けるクライマックスが7回に訪れた。 0-0で迎えた一死二、三塁。千賀はバットを短く持った栗山に対してカウント1-2と追い込んでから“お化けフォーク”を4球続けたのである。栗山のバットはボールから大きく離れて空を切った。 「あそこは外野フライでも1点でした。先に点をやるわけにはいかなかった。三振を狙った」 さらに続く外崎もフォークにバットが止まらず連続三振。157キロのストレートと134キロのフォークのコンビネーションを見せられれば攻略は難しい。“魂のフォーク連投”だった。 千賀が西武で相性の悪いのは打率.400の源田と、打率.364、1本塁打の栗山の2人だけ。 ソフトバンクの野球に詳しい評論家の池田親興さんは、「常識的にはフォークの4連投という配球は考えにくいのですが、ここまでの相性の悪さを洗い直した上で、あえて考えにくい配球に甲斐がチャレンジしたのでしょう。逆に言えば、三塁に走者がいて、ボールを後ろに逸らす危険性のある球種も4球続けたわけで2人の信頼関係に裏付けされた勝負だったと思います」と、分析した。 育成ドラフト同期入団の“絆”の勝利だった。 初回に今宮が本塁で憤死、2、3回と満塁のチャンスにいずれも1本が出ず嫌な流れだったが、千賀のこの“魂のピッチング”が打線の闘志に火をつけた。 「ピンチの後にチャンスありと思いました」 千賀がそう振り返った通り、直後の8回に打線の組み替えで5番から3番に入っていたグラシアルが代わったばかりの平井から均衡を破る25号をレフトスタンドへ放り込んだ。 5回には無死一塁から送りバントを決めていた。おそらくサインだろう。昨年のCSの西武戦でも意表を突くセーフティバントを仕掛けたグラシアルは、アマチュア大国のキューバ出身の選手らしく、バントも厭わないが、チームの勝利を第一に考える“助っ人の献身”が打たせた一発だったのかもしれない。 さらにデスパイネ、柳田が連打。松田がしっかりと犠飛を決めて追加点。9月の打率は1割台のギータを5番に下げたが、キーマンに1本が出たのは朗報だろう。