マジック「12」点灯のソフトバンクは本当に西武とのV争いで優位に立ったのか?
工藤監督の執念采配は9回にも。1点差で迎えた一死二、三塁から高田の打席で、カウント0-1から2球目にスクイズのサイン。高田も、うまく一塁へ転がして見事に成功させたのである。二、三塁だったのでセーフティスクイズは考えにくいシチュエーションだったが、戦略家の辻監督が、スクイズ警戒の素振りを見せなかったのも解せなかった。最終回にストッパーの森が、“おかわり君”に一発を浴びたことを考えると、スクイズで奪い取った1点の価値は大きかった。 試合後、千賀は、やっと灯ったマジック「12」について「まだまだ遠いなと思います」と語った。残り12試合でのマジック「12」はないに等しい。これで西武とのデッドヒートに決着がついたわけではない。だが、評論家の池田さんは、ソフトバンク優位説を唱える。 「まったくどうなるかわかりません。ただ、ソフトバンクには、3つの優位点があります。一つは、マジック点灯の心理的な面。やはりゴールが見えたわけですから、集中力はさらに高まります。二つ目は、残りの12試合の対戦カードが西武に比べて有利な点です。3位争いでCS出場に勝負がかかっているロッテとの対戦がなく楽天戦が2試合だけ。一方、西武は、そのロッテ、楽天とのカードが5試合ずつ残っています」 ソフトバンクも西武も残りは12試合ずつだが、ソフトバンクは、苦手なロッテとの対戦は終了、CS争いから脱落した日ハム、オリックスとの対戦カードが、5試合ずつ計10試合ある。いずれも今季13勝6敗1分と相性のいい2チームである。 一方の西武は、ロッテ、楽天というCS争いで負けられない戦いが続く2チームとの対戦カードが5試合ずつ残っていてソフトバンクとは対照的だ。しかも楽天には、ここまで9勝11敗と分が悪い。 池田さんが指摘するように残り試合の対戦カードを考えるとソフトバンクよりも西武が厳しい戦いを強いられるのかもしれない。 また池田さんは3つ目の優位点として引き分け試合の差を挙げた。 「プロ野球の順位は勝率で決まるので、引き分けが4試合のソフトバンクは、引き分けが1試合しかない西武に比べて、実質、“隠れた0.5差”を持っていることになるのです。最終的には、この部分が優勝を決める分かれ目になるのかもしれません」 この“隠れた0.5差”は確かにソフトバンクのアドバンテージである。残り12試合。熱パの結末やいかに。