コロナ禍に最大632億円もの大赤字を叩き出した「H.I.S.」、業績回復の牽引役はあの「変なホテル」だった
この展開を支えているのが、「快適性」「つながる」「先進的」「遊び心」「生産性」という5つのコアバリュー。この価値基準に基づいて、インテリアも次々に刷新されており、現在は、フランスベッドと共同開発したオリジナルマットレスやロフテーの枕など、高品質な睡眠環境の提供に注力。ITコンテンツも更新し続けている。 と、ここまで聞くと非常に良いものに聞こえるが、サービスにおいてはいかがなものか。「ロボットによる省人化」はゲストにとってはもの珍しくとも不利益にはならないのか。そう尋ねると、意外な返答が返ってきた。
「24時間内線でスタッフにつながり、必要な時にはすぐに対応します。接客がない、無人だと思って来ても、お客様は必ずなにかしら、スタッフの対応に合う場面がある。通常は当たり前の丁寧な接客が、プラスに転じているのです」と遠藤さん。 そういえば、筆者がかつて宿泊した際にも、その言葉を実感する出来事があった。予想に反して、従業員の温かな対応に触れる機会があり、そのやりとりには、「時間に急かされていない」丁寧さと余裕が感じられた。あの余裕は、チェックインをロボットに任せ、業務を効率化しているからこそ生まれるものだろう。
「ロボットによる省人化」と「必要な時の手厚い人的サービス」のバランスが、顧客と従業員両方の満足度につながっているビジネスモデル。「変なホテル」は、人件費が削減でき、比較的安価な投資で利益率を上げていけるポテンシャルがあるブランドといえるだろう。 ホテルの土地建物は自社物件と賃貸があるそうだが、自社のオーナー物件である場合、利益率はかなり高いという。グループの本業である旅行業と比べても、利益率は突出した水準となっている。
■上質路線とエンタメで描く、収益力強化への道 「変わり続けることを約束する」変なホテル。作れば作るほど新しくなってきたが、ゲストの快適性やニーズが多様化するなかで、さらなる発展を遂げている。 「21ホテル目を迎え、新たなフェーズに入った」と遠藤さん。「1ブランドだけではゲストが求めるサービスやクオリティに対応できない」と判断し、これまでの価格競争力重視から、プレミアム路線への展開を開始したのだ。 すでに東京の浅草田原町や名古屋、京都の「変なホテル」では、これまでより広い客室や高級家具の導入、スイートルームの設置など、上質なサービスを提供している。また浅草田原町や京都のフロントは、ロボットからホログラムに進化。今後、プラスアルファのプレミアムサービスも付加していく予定だ。平均客室単価についても、現在の1万5000円から、2~3割の上昇を目指す。