コロナ禍に最大632億円もの大赤字を叩き出した「H.I.S.」、業績回復の牽引役はあの「変なホテル」だった
一方で、山手線や乙女ゲーム、ゆるキャラなど、さまざまなコラボルームやコンセプトルームも作りはじめている。その理由は「もっと変な」体験価値を創造するためだ。 「これまで『変なホテル』とうたっていながら、『フロントは変でした。でも客室は普通ですね』というお声をいただくことが多かったんです。もっと、H.I.S.グループの企業理念である『「心躍る」を解き放つ』に通じる、ワクワクを提供したいと考えています」(遠藤さん)
各ホテルに5つのコンセプトルームを設置する計画で、同じホテル内で泊まり歩いたり、全国の特徴的な客室を巡るリピーターの創出も狙う。 それに加えて2024年11月には、関西空港に程近いりんくうエリアで、初の「変なリゾート」ブランド、『変なリゾート&スパ 関西空港』がオープン。 前身の『変なホテル 関西空港』が持っていたオーシャンフロントの眺望や、M&Aで取得した隣接の温浴施設を生かし、大浴場やサウナ、飲食店、キャンピングカー宿泊などを備えた複合レジャー施設として生まれ変わった。
同ブランドは、遠藤さんが前身の『変なホテル 関西空港』に訪れた際、海の眺めの美しさに驚いたことと、「リゾートホテルに来たみたい」というゲストの声を受けて生まれたそうだ。 「であればいっそ、リゾートブランドにしてしまおうと」と遠藤さん。変なホテルの「変」は変化の変。これからもその名の通り、姿を変え続けていくに違いない。 ■人手不足が加速するなか、注目高まる「変なホテル」 コロナ禍を経て、ホテル業界全体では人手不足が常態化し、人員確保が困難な状況が続いている。JR東日本グループが手がける『B4T』ブランドなど、スマートホテルへの大手参入も始まっている。
「お客様の安全を担保できる人材配置を前提に、生産性向上は加速するべき課題です。大手の参入により旅館業法など規制面での整備も進み、業界全体の体質強化につながるのではないでしょうか」と遠藤さんは語った。 変化の先にあるのは、効率化とホスピタリティを両立させる、新しいホテル経営の形なのかもしれない。
笹間 聖子 :フリーライター・編集者