モバイルSuicaの呪縛? 日本で「スマートウォッチ」タッチ決済が広がらない理由 インバウンド爆増時代に考える
タッチ決済導入で業界革新
全国で進む公共交通へのクレジットカードによるタッチ決済の導入。交通系ICカードのSuicaと同じように、クレジットカードを認識パッドにかざすだけで自動改札を通れる仕組みだ。 【画像】データで見る未来都市! これが交通サービスへの「期待度」です! 画像で見る(12枚) 交通系メディアだけでなく、テクノロジーメディアや一般ニュースメディアも、この三井住友カードが主導するタッチ決済導入の実証実験に注目しており、多くの記事が配信されている。クレジットカードで電車やバスに乗れるようになるのは、それだけ画期的な出来事だ。 さて、本稿では日本の公共交通におけるタッチ決済導入を、 「外国人の視点」 から考えてみる。というのも、海外ではすでにクレジットカード決済に加えて、 「カードにひもづけたデバイス」 を使った決済が主流となっているからだ。
通勤ラッシュと決済規格の矛盾
日本では交通系ICカードが広く普及しているが、この普及が ・海外製スマートフォン ・スマートウォッチ の販促において障壁となることがある。というのも、世界的に普及しているNFC(近距離無線通信)規格は 「Type A/B」 であるのに対し、日本の交通系ICカードはType F(FeliCa)を採用しているためだ。 クレジットカードのタッチ決済で使用されるのはType A/Bだが、日本の通勤ラッシュを円滑に処理するためには、高速処理が可能なType Fが不可欠となっている。しかし、この交通系ICカードの普及が、海外標準規格とのギャップを生む主な原因となっている。 そのため、普段使いのクレジットカードで自動改札機を通過することができず、交通系ICカードを別途入手する必要が出てくる。また、海外では便利に使用できるスマートウォッチも、日本ではその利便性を発揮できない場面が増えている。
日本市場での規格格差
普段利用しているクレジットカードをスマートウォッチにひも付けることは、海外では広く浸透しているライフハックだ。 NFC対応のスマートウォッチにクレジットカードを登録すれば、カードを取り出す手間が省け、カードの摩耗を防ぎつつ、移動や買い物をシームレスに楽しむことができる。特に米国では、クレジットカードがキャッシュレス決済市場の中心を占めており、 「いかにストレスなくクレジットカードを利用するか」 が重要なテーマとなっている。 では、なぜ日本ではタッチ決済機能を搭載したスマートウォッチが普及していないのか。その理由は、日本市場ではモバイルSuicaに対応したType F規格のスマートウォッチが優先され、Type A/B規格のみの製品は金融機関やカード発行会社の関心を引きにくいからだ。 また、海外から輸入された製品が総務省の技適マークを取得していても、日本国内で発行されたクレジットカードと即座にひも付けることは難しい。現在、日本国内でスマートウォッチ用OSであるWear OSに対応したクレジットカードやその発行会社は非常に限られており、日本ではクレジットカードとスマートウォッチの連携が後回しにされている状況といえる。