コロナ禍に最大632億円もの大赤字を叩き出した「H.I.S.」、業績回復の牽引役はあの「変なホテル」だった
②H.I.S.グループとの強力なシナジー 続いては、130社を擁するグループならではの強みだ。物販の内製化による原価低減、旅行部門からの送客など、グループシナジーが収益性を高めているのだ。 そもそもの話、H.I.S.のような旅行業とホテル業にはシナジーが生まれやすい。社員には当然旅行好きが多く、そうなるとホテルも好きで、思い入れがあって異動を希望する人も多かったとのことだ。遠藤さんも、「ホテルを自分で建ててみたい」と出向を決めたのだとか。
またコロナ禍では、「旅行業にいきたかったけれど募集がなかった」とH.I.S.ホテルホールディングスにいったん入社したという人も……。「コロナ禍を経て、グループ他社とのつながりが強くなった」と遠藤さんは微笑む。 ③開業当初から磨き上げてきた省人化と効率運営のビジネスモデル オープン当初から、受付とチェックインをロボットに任せていた「変なホテル」。 元々、徹底した効率化と生産性の高さが強みだった。非対面・非接触が求められたコロナ禍は、このユニークなビジネスモデルがマッチし、さらに加速した。社員が担当できる業務の種類と量を増やす“マルチタスク化”が進んだのだ。
たとえば清掃は、外部業者に委託していたところを、社内管理に切り替え、専属のアルバイトと、一部にロボット掃除機を活用する形に。また、客室に設置していたアメニティを、ゲストが必要な分だけロビーで選ぶ「アメニティバー」方式に変更した。 これにより、設置する手間が減っただけでなく、廃棄が少なくなったことによる経費削減、環境省が推進するマイクロプラスチック削減への貢献にもつながったという。 ■基本業務は4つに集約されている
マルチタスク化した現在の基本業務は、 1.チェックインのサポートや予約管理 2.ゲスト、客室へのイレギュラー対応 3.ゲストの宿泊記録の管理・システム運用 4.定期時間にラウンジのドリンクやフードの準備・片付け の4つのみだ。イレギュラー対応以外は、各業務をこなす時間帯が決まっている。 従業員の人数も最小限だ。通常のホテルでは、1ホテルに15~20名必要な従業員を、開業当初から7~8名でローテーションして運営している。常駐するのはわずか2名だ。このため、コロナ禍で顧客の人数が大幅に減った際も、人員削減や配置転換を行う必要がなく、事業継続の一因になったという。