私の胸を音を立てながら潰していった「衝撃的な報せ」
永美さんとの思い出の場所
私は永美ハルオさんによって科学の世界に引き込まれ、永美ハルオさんによって科学の世界を生きてきた。今となっては、そうとしか思えない自分が今ここにいる。 しかし、永美さんのあの独特で、科学というものの悲哀や、科学者の人情と滑稽さ、科学の井戸のように深く、そして青空のように遠く広がった碧落(へきらく)を、優しさと愛情を込めて表現されたあのカット絵に、もう新しいものは出てこない。 永美さんの絶筆が、『DNAとはなんだろう』に寄せてくださったカット絵だったことを、編集者のKさんから伺った。それだけで、私の胸が音を立てて潰れていくのに十分である。ほんとうに、残念でならない。 最後に、たくさんの科学好きの子どもたちを支え、育て、そして日本の科学を支えてくださった永美さんに、心からの敬意と深い感謝を捧げたい。 失礼を顧みずに申し上げれば、小学生の頃のあの薄暗い父の書斎は、私と永美ハルオさんとの思い出の場所であった。永美さんは、一生の思い出として残る珠玉の時間を、私に与えてくださったのである。 〈永美ハルオさんの最後の作品が掲載された武村政春さんの著作〉 DNAとはなんだろう 「ほぼ正確」に遺伝情報をコピーする巧妙なからくり 果たしてほんとうに〈生物の設計図〉か? DNAの見方が変わる、極上の生命科学ミステリー! 世代をつなぐための最重要物質でありながら、細胞の内外でダイナミックなふるまいを見せるDNA。果たして、生命にとってDNAとはなんなのか?
武村 政春(東京理科大学教授・巨大ウイルス学・分子生物学)