『六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家』インタビュー: イタリアの巨匠は“ロッジア”になにを思う?
1980年代に世界のデザインに大きな影響を与えた伝説的なデザイン集団〈メンフィス〉。建築家のミケーレ・デ・ルッキは若くして、その前身である〈アルキミア〉から参加した人物だ。アルミニウム製アームライト〈トロメオ〉、メンフィスらしいユニークなフォルムをもつ椅子〈ファーストチェア〉など、家具や照明のデザインにも名作が多い。そのデ・ルッキがプライベートワークとして制作した家型彫刻の展示が〈21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3〉で始まった。 【フォトギャラリーを見る】 2018年、イタリアの建築デザイン誌『ドムス』のゲスト編集長に就任したミケーレ・デ・ルッキは三宅一生にインタビューを行うため日本を訪れた。三宅とデ・ルッキは〈21_21 DESIGN SIGHT〉で互いの実験的なプロジェクトについて語らい、いつか展覧会をしようと盛り上がったという。そのプロジェクトとは異なるものの、今回デ・ルッキは〈21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3〉を舞台に未発表の木材とブロンズによる6つの家型彫刻「ロッジア」を発表する。「ロッジア」とはイタリアの建築様式で屋根をもつ半屋外空間をいう。 「本展における非常に重要なテーマがロッジアです。内部の生活と外部の環境が交差する空間であり、初めて人と自然が交わる部分。6点の作品でロッジアの象徴的な形を表現しました。これと同質の空間は日本や他のヨーロッパ諸国にも見られます。ルネサンスの建築家はこうした空間を通じて調和を表現しようとしましたし、日本では侘び寂びや日本の自然観を表現しようとしました」 デ・ルッキは6つの家を眺め、「イタリアでは日本的と言われ、日本ではヨーロッパ的と言われるのです」と笑う。切妻屋根はたしかに日本的だが、建築の普遍的な要素を凝縮した模型に見える。 「人間と自然の関係する場所として、ロッジアはこれからますます重要な建築の概念になると考えています。私自身も自宅にロッジアを設け、そこで多くの植物を育てています。なかでも季節の変わり目にロッジアで過ごす時間はとても素晴らしい。建築とはまず人を守るために存在しますが、ロッジアは自然と身近に接することができる場所なのです」