そもそも「党首討論」とは? 過去の主なやり取りを振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
2年ぶりとなる「党首討論」が6月9日に国会で開かれます。菅義偉(よしひで)首相にとっては就任以来、初の党首討論になります。最近ではめっきり開催が減り、国会会期末の儀式のような形骸化も指摘され、与野党双方から「歴史的使命は終わった」という声まで上がっています。しかし前世紀末からスタートした党首討論は、それこそ儀礼的、紋切り型だった国会審議のあり方を改革する切り札の一つとして登場した経緯があるのです。導入の狙いや求められるあり様、過去の印象的な討論などをひもといてみました。 【図解】<国会用語>法律ってどうやってつくるの?
国会活性化の一環で英国をモデルに導入
党首討論は、首相と野党党首が一対一形式で議論するもので、イギリス下院の「クエスチョンタイム」(QT)がモデルです。QTのうち、特に週に1度30分間の枠で行われる「首相へのクエスチョンタイム」を参考に制度化されました。1999(平成11)年11月に初の党首討論が試行的に行われ、本格導入された2000年2月からは、衆参両院に設けられた国家基本政策委員会(常任委員会)の合同審査会として開催されています。 そもそもは、この頃に自民党と連立政権を組んでいた自由党の小沢一郎党首が「国会改革」の一環として推進してきました。当時の国会では、野党の質問に対して所管の国務大臣ではなく非議員である官僚が答弁に立つ政府委員制度が存在し、「大事なことなので政府委員に答弁させます」などという大臣の珍答弁がまかり通っていました。国会審議の活性化に向け、この政府委員制度を廃止して副大臣・政務官を設置したほか、党首討論という新しい論戦の舞台を作ったのです。
「週1」想定が近年はめっきり開かれず
党首討論は当初、時間は計40分間(現在は45分間)で、国会会期中は毎週水曜に「週1回必ず開く」想定でした。「党首討論」といっても、与党側で参加するのは首相(与党第1党党首)のみで、他の連立与党党首は出てきません。対する野党は、参加できるのは所属議員10人以上の会派の代表のみで、議席数に応じて質問時間が割り振られます。 野党党首が首相に質問できる機会は、本会議や予算委員会が代表格です。しかし、本会議では質問も答弁も言いっ放しで「討論」になっていませんし、予算委では必ず首相が答えるとも、野党党首が質問するとも決まっていません。予算委で首相は基本的に質問を受けるのみですが、他方、党首討論では首相から野党党首への質問(=逆質問)も可能です。 ただ、首相が本会議や予算委員会などに出席する週には党首討論を行わないことが与野党で取り決められており、近年はほとんど開催されないケースも増えています。直近の開催は2019年6月で、今回開かれれば約2年ぶりとなります。 その理由はさまざま。日本の首相は国会会期中、本会議や予算委はもとより、重要法案を審議する委員会に出席することが多いため開催機会を失ったり、自らやりたいという動機がなかったり。野党側も多党化しているため、計45分間の中で質問時間を按分するとわずかしか残らず、かつ予算委での首相への一問一答の方が魅力的で、首相出席の「集中審議」など予算委での追及を優先する傾向がみられます。