自衛隊「ミサイル大量購入」が予算消化に過ぎない訳
しかも、今では保管可能量が減るという事態も起きている。神奈川県横須賀市にあった大矢部弾庫のトンネル式火薬庫は、換算爆薬量20トンまでの弾薬が保管可能だった。それが、50メートルの距離にマンションが建ったため、保安距離規定から保管可能量は100分の1、200キログラムにまで減少した。 また、ミサイルには整備の手間もかかる。最新型でも完全なメンテナンス・フリーではない。オーバーホールは不要だが、劣化する液体燃料と電池は定期交換しなければならない。
これまではミサイル保有数が少ないので問題とはならなかった。仮に交換間隔が2年のミサイルが自衛隊全体で480発あってもたいした問題ではない。弾薬は意図的に整備する月をならすので、毎月20発ずつの作業で済む。 それが増えるとなると、かなりの負担となる。15種類が毎年ざっと50発ずつ増え、それが10年続けば整備対象は7500発の純増になる。整備員を準備できるかもわからない。 しかも、ミサイルが旧式化した後も負担は消えない。使う見込みがあやしくなっても保管と整備は続くからだ。
例えば海自のスパローはその好例だ。戦闘機用だが、適当なミサイルがないので護衛艦「しらね」向けに購入したが、その直後に軍艦用に改良したシー・スパローが登場すると旧式化した。ただ、耐用年数が残るため購入から30年以上、2010年頃までミサイルとして保管整備を続けなければならなかった。 第3は、発射手段がなくなるという問題である。ミサイルの大量購入は将来に起きるかもしれない戦争に備えたものだ。ただ、まさに戦争が起きたときに、搭載する護衛艦や戦闘機があるのか疑わしいミサイルがある。
具体的に言えば、対空ミサイルのうちのAAM-4と23式SAMだ。敵国攻撃用の潜水艦誘導弾も怪しい。 ■発射すべきときに発射できない AAM-4はF-2戦闘機とF-15戦闘機用の空対空ミサイルだが、近いうちにこれら搭載する戦闘機がなくなる。F-2は機体構造の寿命から2030年過ぎ、F-15も性能とコストの問題から、おそらくは同時期に退役が始まる。 その後に、搭載機が登場する見込みも立たない。導入中のF-35戦闘機はAAM-4に未対応である。日英伊の3カ国共同開発の新戦闘機は完成するかわからない。仮に完成するとしても、納期がいつになるのかまったく見えない。計画では2035年配備となっているか、今までの例からすれば10年や20年は遅れる。