自衛隊「ミサイル大量購入」が予算消化に過ぎない訳
1970年代、実は予備ミサイルはゼロだった。ミサイルは搭載艦や搭載機、ランチャーを買ったときに付けたぶんの数しか持っていなかった。 例えば、護衛艦用は1回分、つまり1回で搭載できる数だけだ。例えば1977年度予算で発注した護衛艦「はつゆき」なら16発となる。発射機ぶんの8発と艦内弾庫ぶんの8発を建造費で購入して終わりにしていた。 ■「適切な数を保有」になおざりだった自衛隊 戦闘機用は2回分だった。スパロー・ミサイルを4発搭載できるF-4ファントムの場合、1機あたり8発の購入で終わりだ。
地対空ミサイルは1.5回未満だ。陸自の防空部隊のうち、予備のホーク・ミサイルを持っていたのは、東京、北海道、沖縄の部隊だけ。ほかでは、ランチャーに載せている3発だけである。 1980年代以降もあまり改善されなかった。1980年前後からミサイルなどの購入費を増やすが、訓練射撃での消耗もあるので在庫はあまり増えないと言われていた。1982年以降に防衛費は急成長するが、ミサイルを搭載する護衛艦や戦闘機の数も増えた。そのため予備ミサイル不足は解決しなかった。
こういった背景から考えると、「予備ミサイルを購入する」ということ自体は悪い話ではない。ただ、それにしても今回の購入数は多い。要求額を同等品の単価で割ると、毎年で50発ずつ買うような話だからである。 そのため、将来は在庫が問題となる。ミサイルの訓練発射機会は少ない。それなのに毎年50発もの購入を続けると、今度は余剰が問題となる。 なにより、ミサイルは長期保管することと相性が悪い。40年や50年間保管しても差し支えのない砲弾や銃弾とは明らかに異なる。その点で、今回の大量購入は筋が悪い話なのである。
冒頭に挙げた問題点を解説しよう。第1に、ミサイルはすぐに旧式化してしまう問題だ。 ミサイルは技術の粋を尽くした最先端兵器だ。電波や光学技術、信号処理技術、素材、ロケットモーターの各要素について、同世代兵器の中では最新の技術が適用されている。 ■世代交代が早くすぐに旧式化 それゆえに、世代交代が早い。技術革新のサイクルは短く、すぐに新型が出現する。ミサイルの場合は10年くらいで世代交代となる。賞味期限が短いと言ってもよい。既存のミサイルはすぐに旧式化して使い道がなくなる。これはスマホが発売から数年経つとゴミとなるのと同じだ。