自衛隊「ミサイル大量購入」が予算消化に過ぎない訳
だからこそ、購入数の見極めが重要となる。多額の予算を組んで最新ミサイルを大量購入しても、弾庫に貯蔵している間に価値は減少する。場合によれば無価値となる。とくに国産ミサイルは厳しい。早い段階で不良在庫となりやすい性質がある。 アメリカ製ミサイルは「改修キット」の提供がある。旧式ミサイル向けの交換部品であり、それにより性能は改善する。 対艦ミサイルの「ハープーン」の場合、1977年製造の初期型でも最新型の「ハープーン・ブロック2」と同性能になる。対空ミサイルのSM-2も、最新型のSM-2Cまで改修できる。射程を除けば新規導入したSM-6と同等の威力を持つミサイルとなる。
対して、国産ミサイルは旧式化してもそのままだ。ハープーンの後に登場した対艦ミサイルASM-1やASM-1C、SSM-1は、1980年代技術のままで放置されている。GPS誘導や対地攻撃機能を追加することはないし、JP-10燃料への変更による射程延伸や、それを活かした再アタック機能導入はない。 そのために、将来に差がつく。例示した対艦ミサイルの場合なら、最新のJSMや、その原型NSMを模倣した12式改良型が普及した後でも、ハープーンなら充分に実用に耐える。しかし、国産型はそうではない。どうにも使い道がないミサイルになるのだ。
第2の、保管や整備の問題である。ミサイルの大量購入を進めるとその負担が大きくなる。 まず、保管場所の制約がある。ミサイルを保管する弾庫には容量の制約がある。火薬類取締法で決められた換算爆薬量を超えて保管することはできない。つまり、このまま大量購入を続けると既存の弾庫には入り切らなくなる。 ■保管できる場所の確保も難しい 弾庫増設は簡単ではない。周辺住民や自治体がいい顔をしないこともあるが、それだけではない。そもそも適地もない。弾庫は住宅や学校、病院から決められた保安距離を確保しなければならない。ただ、基地周辺も住宅などの開発が進んでいるので、その保安距離がとれない。