PSV残留の堂安律が今季初出場で決めた戦慄のスーパーゴールに込めた思いとは…「ようやくチームの役に立てた」
ハーフウェイライン付近でボールを受けると、右サイドを積極果敢にドリブルで駆け上がる。そして、ペナルティーエリアを前にして左方向へ旋回。相手がかけてきたプレッシャーを、AZのゴールとは反対方向に軽やかにかわした直後だった。 利き足の左足を迷わず振り抜くと、カーブ回転がかかった弾道は芸術的な弧を描きながらゴールの左隅に吸い込まれた。AZのキーパー、ピーター・ヴィンダールが195cmの身体を必死に伸ばしながらダイブしても、まったく届かない初ゴールだった。 無傷の開幕4連勝をマークして首位をキープしたロガー・シュミット監督は、ともに途中出場で2点目と3点目を決めたヨルベ・ヴェルテッセンと堂安の名前をあげながら、これからの戦いに戦力として加わってくると興奮気味にまくし立てた。 「2人ともゴールでクオリティーの高さを示してくれた。我々には彼らが必要だ」 ドイツ出身の54歳の指揮官だけではない。 オランダのメディアも「なんて美しいゴールなんだ」、あるいは「宝石の輝きで勝ち点獲得が保証された」と絶賛。ビーレフェルトへの武者修行をへて、頼もしく変貌を遂げた堂安を歓迎している。 10月にはともに連勝発進したサウジアラビア、オーストラリア両代表とのアジア最終予選前半戦の大一番が待つ。特に敵地でのサウジアラビア戦は、右サイドのファーストチョイスだった伊東純也(ヘンク)が累積警告で出場停止となる。 トップ下で先発した中国戦で久保建英(マジョルカ)が違いを見せたなかで、東京五輪で変幻自在なコンビネーションを見せた堂安の存在感が右サイドで増してくる。代表を活性化させるには東京五輪世代の台頭が不可欠だからこそ、堂安はこう語っていた。 「五輪世代同士で特に話したわけではないけど、何も言わずとも全員が野心と責任を持って代表チームに来ている。スタメンに入れるように、どんどんアピールしていきたい」 次の国際Aマッチデーまでに組まれているPSVの公式戦は6試合。名門クラブのアタッカーの一人として、逆襲への狼煙をあげた堂安はできるだけ多くの数字を手土産にしてサウジアラビアに入り、今度は森保ジャパンの役に立つゴールを狙う。 (文責・藤江直人/スポーツライター)